8 アガの洞窟
中は夜よりも暗かった。
ハヤテはカンテラを高々と掲げ中を照らそうとする。
しかし思ったよりも高いため洞窟の天井は見えず
ほんの少しばかり二人の周りと足元、そして両側の壁を照らすのみだった。
「本当にここ國で管理してんのかよ・・・せめぇし・・・通路ぐらい作ってるかと思った」
「・・・多分、管理してるんじゃないの?
この洞窟は木の根が張り巡らされてるから・・・そんなにやわなつくりではないと思うけどね」
前を歩くスバルはハヤテのため息を聞き、笑った。
洞窟内は床にヒカリゴケが生え、その合い間を縫うように木の根が伸びてきている。
スバルは足を止め、ヒカリゴケに目をやった。
「ねぇ・・・ヒカリゴケってこんなに明るかったっけ?」
「あ?・・・知らねぇよ
俺洞窟入るの初めてだし・・・こんなもんじゃねぇの?」
「違うよ・・・多分・・・もっと微弱」
しゃがみこんで苔にふれてみる。
ざらざらしたような、湿ったような感触、ふと感じた変な感触。
ふと、スバルは自分の手を見た。
「うわっ・・」
おもわずしりもちをついて手を高高と上げてみる。
ざら・・・
後ろについた手に再び変な感触。
「おい、どうしたよ・・・」
ゆっくりと歩いてきたハヤテはスバルに近づいて声をかける。
それでもスバルがたたず、ただ気色悪げに手を見ているのでしかたなく、ハヤテはスバルの腕をつかんでたたせた。
「どうした?」
「ねぇ・・ちょっと・・・」
スバルの小さな手がハヤテの目の前にかざされる。
「なんだよ」
「わかんない!?」
もう一度、手を見てみる。
包帯を巻かれた両の掌、そしてそこから出ている指計10本。
肩の位置に上がるカンテラの光でよく見てもあまり変化は感じられなかった。
少し、いつもよりも汚れているだけだろうに。
「なんだよ、わかんねぇよ」
しばらくぽかんとしてスバルはハヤテを見ていたが、ああそっかと呟くとハヤテのカンテラを掴み取り
その火を消した。
「うわ・・・!!」
おとずれる、闇。
その中で微弱に光る足元と・・・スバルの手。
「おい!お前やばいって・・・!!
なに手ぇ光らせてんだよ」
「わかった?
これ、今ヒカリゴケ触ったらこんななっちゃったみたいなの」
「ヒカリゴケ?」
ああ、足元に生えるあれ・・・
ハヤテはゆっくりと足元に視線を下ろした。
そして、気付く。
「なんか・・・かいてある・・・・」
結局スバルの手についたのは蛍光塗料のようなものだった。
正確には光のもととなる石を砕いたもので、ヒカリゴケにまかれているものだった。
「親切だなぁ、國の管理者も。
足元を照らすライトってわけか」
「んなわけないでしょ」
ハヤテの頭を軽くたたく。
「こんなことしなくてもこういう洞窟はいる時はカンテラ持ってるものだから・・・
必要ないよ、多分。
この光る砂・・・誰か別の人が撒いたんだよ・・・國に関係ない人が・・・」
カンテラを消し、足元を見渡してみるとそこには奥に向かって何本もの線が描かれていた。
それは今まで二人の背後にも続いており、洞窟の始めのところからあるようだった。
「道案内?」
「だろうね」
「いやでもさ、こんなに書いてあったらどれについていったらいいかわかんねぇよ」
言うハヤテに向かってスバルは笑った。
何本もの線は絡み合いつつそれぞれ先のほうでは別の方向へ伸びていっているのがわかる。
まだまだ二人は始めのほうを歩いていて迷うことはなかったが先のほうは複雑に入り組んでいるようだった。
「ハヤテ、面白いこと教えてあげる」
ハヤテを見上げながら周りを跳ねるスバル。
腰のポケットから糸を取り出しハヤテに見せる。
「この砂ね、多分コウセキを砕いたものなんだよ。
光る石って書くの。
その光石にはね、三つ種類があるの」
「三つ?」
「そう。
見た目は同じなんだけどそれぞれの種類と対応した力をあてるとそれぞれの色に光るの。
その三種は赤と青と白なんだけど・・・対応する力は赤は火、青は水、白は風。
例えば・・・アカヒカリゴケなら火にしか反応しなくて日を浴びると燃えるのよ。
アオヒカリゴケは水を浴びせると青く燃えるのさ」
ゆっくりとハヤテは理解すると手をスバルの頭に置く。
「見た目は同じ?」
「見た目は同じ」
合う視線。
そしてハヤテは深呼吸。
「どうやって見分けんの?」
「・・・」
スバルは困ったように顔をあげた。
「えへ」
とりあえず
笑顔
衝撃に弱いヒカリゴケは他属性に当てればたちどころに消滅してしまうだろう。
あきらかに洞窟攻略の鍵となりそうなこのコケをどうするかという問題の答えは意外なところにあった。
「そういえばさ・・・」
長い沈黙の後口を開いたのはハヤテ。
結局手がかりもつかめずひとまず二人は入り口から小一時間歩いたソコで夜食を取っていた。
例の役場の娘が持たせてくれたお弁当。
中のおにぎりをほおばりながらスバルは顔をあげた。
「どしたの?」
「アガって・・・何語だっけ・・・?」
「さあ・・・標準語じゃないでしょ。
たまたまなんかの単語から地名がついただけじゃないの?」
スバルの答えに納得いかないようにハヤテはうなった。
必死に思い出そうとする。
「違うって・・・多分、古代語かなんかじゃないか?
習った気がするんだよなぁ・・・」
「ア・・ガ・・・ねぇ・・・アガ、アガ」
口、というよりあごを手で動かしながらスバルは言う。
何回も繰り返すうちに必死に思い出そうとする。
「お前は、学校かなんかで習ったろ?」
「学校?・・・えっと、・・・・・ね?ほら・・・あたし行ってないし」
「あえ?」
一瞬、ハヤテの顔が凍る。
触れてはいけない過去だとか、そういった類のものに触れてしまったかと驚く。
「ああ!いいんだよ、気にしないで。
まあ確かに行ってないの、珍しいのはわかるけど。
ほら、昔から旅ばっかりしてたし」
「空一座で?」
「ううん、あれは冬と夏の休みの時期しか旅しないもの。
そこにいく前に別に人たちと旅してたの。
まあ親戚とかだよ」
「はぁん。
まあでも、親戚とかから古代語ならったろ?
今でもじいさんとか使うもんな」
「うん」
「なんだっけな、アガ」
言ってハヤテは宙をみた。
安心した。
決してスバルが深刻そうな顔をしていなかったから。
よかった。
よかった。
何気ない会話で、何気ない一言で
傷つけてしまわなくて。
「あぁ!!」
短い沈黙を破り、いきなりスバルが叫んだ。
「どうしたんだよ、うるせぇ」
「アガリスクだよ!ハヤテ!!」
「アガリスク・・・?古代語?」
「ちがくて・・いやもしかしたら古代語かも・・・でも確か、うちの地元の言葉。
意味は確か・・・火」
ハヤテははっとした。
ようやく開けた道。
二人の顔は喜びに溢れ、早速スバルは色陣を編み出した。
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できた!できたよアガの洞窟!!
ひたすら二人の会話なお話です。
すごい行き当たりばったりだなぁ・・・とりあえず、やっとヒカリゴケの答えがでそうなので
次こそストーリー的に前進できそうです。
がんばれ、あたし。
ちなみに、スバル。
旅ばかりしているので生活術や雑学にはなかなか詳しいという設定で。
だから説明はほとんど彼女。
思い出したり、発見するのもスバル。
っていうとハヤテは役立たず・・・?あれぇ?
きっとこれから、旅の仲間として重要な位置をしめる・・・はず・・・
(2002/07/26....haruco)