BETWEEN 6 AND 7 ジリーナの子供用マント

 

翌日二人は許可印をもらうと朝早くマスカを出た。

空はあいにくの空模様。しかしやわらかい風が吹いていた。

「あ!見えたー!」

国境を無事越えてしばらく歩くと目の前に大きな門がある。

スバルはそれに手を触れるとあたりを見渡した。

「さっすが、鉄壁の国、奏海(そうかい)だねえ」

大きな門に沿うように左右に広がる石の壁。それは常人が超えられる高さではなかった。

それもそのはず、空の国の隣にあるこの海の国は大陸一の防御力を持つ国で、巨大砲などの破壊的な攻撃力のある武器こそは持たないが過去いくつもの戦争があった中で海の国が侵入、破壊されたことはほとんどなかった。

それは防衛魔法術を国民に教育範囲として修めさせ、世界で一番硬い地である泰土と貿易を盛んに行っている結果でもあった。泰土の大地を加工して巨大な壁を作り、隣にある掌空の技術で防御力をあげたのだ。

貴重な産物や技術を所持していた掌空はいくつもの戦争を仕掛けられたが掌空を攻めるには奏海を通らなければならない。奏海は魔法技術の提供を条件に掌空と締結を結び互いに力を貸しあう仲を気付いたのだ。

奏海の巨大な壁は敵を阻み、国を守ってきた。

「そうとうケンカを仕掛けられたみたいで…なんだ、壁ぼろぼろじゃんよ」

「戦いの傷跡だよ。

 けして平和なものではないけれど、忘れてはいけないものでしょ?」

石壁を手でなでるように触ってスバルは言った。

「まあ・・・ね。

 ほら!スバル!装備整えるんだろ?

 奏海!入るぞー!」

大きく右手を上げて前進するハヤテを急いでスバルは追いかけた。

 

「お客さん…旅人?」

声をかけてきたのは店の者だった。

主人というかおそらくただ手伝わされているだけなのだろう、それはハヤテよりも少し年下であろう少年だった。少年の金色の髪はかすかな窓の光にもちらついて二人の目を細ませた。

「ああ。

 武器は今ので事足りてるんだがどうにも他が頼りなくてな」

「そりゃそうだ!」

ハヤテの言葉に大げさにうなずくと大きな声で少年は言った。

そしてその薄暗い店内のかろうじて日が差し込んでいるかいないかという奥のほうのカウンターから立ち上がるとゆっくりと二人を品定めするように見つつ二人のほうに寄ってきた。

「いったいどうしたのさ、その服は!

 掌空から来たでしょ?その様子だと。

 掌空は旅人が多いと聴くけどそんな服じゃ旅人とも呼べないさ!」

その声があまりに高く、リスのようにキーキーと耳に響くのでハヤテは顔をしかめた。

「あんまり言うなよ。

 何さ。どこがいけないんだよ」

「まず!何も考えていないじゃないか!

 あんた達はこれから西、もしくは南に行くんだろう?

 この先には何があるか知っているんですか?」

「砂…ウチ砂漠…だろ?」

「そう!」

スバルのいった呟きに少年は大袈裟に反応した。

二人を誘うように店の中央、衣服の所につれてくるとそこからごってりした大き目のマントを出した。

「この先には砂漠、そして乾いた国、歓砂(かんさ)がある。 

 木もなく、水もなく、道もない。

 あるのはただ砂、砂、砂!

 そんな森の中でしか通用しないぴったりした移動着じゃあ砂は防げないし

 昼間の日照り、夜の寒さにも耐えられない!

 即行旅はおしまいだよ!

どうせマントもかうんだろう?さあ!買った買った!

うちの品揃えはなかなかいいんだから!」

少年は有無を言わせず営業モードに入る。

マントを一つ一つ見せていく。

「男物は…どうです?コレ。当店自慢の一角獣の皮をなめてつくったマントに…

そうだなあそっちのお姉さんには…ああ!どうしよう!女物は品切れだよ」

少年はしまったとばかりに言う。

「そう」

少年が言うとすばやくハヤテは言う。

「じゃあいいさ。別の店行こうぜ、スバル」

「あっ駄目。

 このあたりじゃうちにしか上質のマントおいてないよ?」

そんな少年の勧誘じみた言葉が聞えたのか聞えないのか。

ふたりは店を後にした。

 

そして夕方。二人はまた店を訪れる。

「おまちしておりました」

そんなニコニコした少年に答えるようにハヤテは舌打ちをする。

「ハヤテ!そんな顔しないの!

 全く。子供なんだから」

「おまえに言われたかないさ、究極精神三歳不器用女め」

「あたしは色陣さえ使えれば不器用でもやっていけるもん。ハヤテこそ精神低迷中でしょ!」

果たしてうまい嫌味になっているかは謎だがとにかく二人はもういちど店にやってきた。

「マント、出しておいたよ。

 お姉さんのは…男物だけどちょうど子供ようのがあったからそれでいい?」

「ぶっ!」

そこにおこるはハヤテの笑い。

必死に腹を抑えてひたすら小さな声で「子供・・・子供」と繰り返している。

「ハヤテ!うるさいよ!

 OK、いいよ。

 あ、そうだ〜奏海のお城ってどうやっていけば良いのかなあ?」

ふと、かなり忘れそうだった任務のことを思い出しスバルは言う。

二人の任務は世界を共におさめる十五カ國に伝わるという陣を集める事。

陣は通常、色陣のように力の出入り口として働くが、掌空の初王バラクはすべての國にそれぞれの陣を与えたという。

おそらくそれぞれの國にあるだろうから集めてこい。

そんな内容だった。

その陣がどこにあるのかなど二人は知らないし國のどこかにあるという事以外しらない。

あまりに情報が少ないため國で一番大な役所のある城に行き、ついでにできたら王さまにあおうと言う事であった。

なにしろ今回の奏海の王は人望に厚いという事らしいからどんな人物か見てみたいと二人は思っていた。

「お城?ジリーナは海の國でも端のほうにあるからなあ…。

 お城に行くのなら水路を通って川をさかのぼるのが一番近いかな。

 でもなんでお城に?城下町の方にでも用があるの?」

「ああ…それは、ちょっと恥ずかしいから秘密」

困ったようにスバルは言った。

ハヤテは「子供用」という響きが相当ツボなのかまだ腹を抱えている。

「まあそういう事なの。マントありがとうね。

 でも、次からは女性用も仕入れておいてよ?」

「はい」

スバルの言葉に。

少年は素直に笑ってうなずいた。

「子供用〜!!!!!!」

「うるさい!」

再び笑いのこみ上げてきたハヤテを、二人は仲良くはたき倒した。

 

 




 


 

-----反省------

前にサリィに読んでいただいた時「こんなのどかな日常っぽいの好きよん」といってもらえたのが嬉しかった話。

細い娘ッ子は子供用だろうとなんだろうと着こなしてしまう感じがしていて、身長ちょい低めなスバルはまさにねらいどころ。趣味丸出しとも言います。

ハヤテはハヤテでお兄ちゃんらしく人を馬鹿にして(妹笑って)生きています。クサレ。

ああ、ダメダメな二人。

さらにダメダメなハル子。