ESPY 3
向かったのは屋上。
階段を上りながらサトルはなにやらブツブツと言っていた。
かける足は速く、なかなか追いつけない。
しかしそれすら気がつかないくらい急いでいたサトルは気にせずに階段を上りつづけた。
5階建ての校舎の最後の階段。
トモがそこにやっとの思いで上り詰めたときにはすでにサトルは屋上に上がったあとで
バタンを勢いよくしまる思いドアの音が響いていた。
なんとかかけよりはめ込みの窓から外を見てみる。
そこには対峙するノゼハとサトル。
今更出て行けるわけでも無し
トモはドアを背に階段の最後の段に腰掛けた。
安く、古い作りのドアのせいか屋上の声が聞えてくる。
野暮かとは思いつつも興味津々、身を小さくして耳をそばだてると
聞えてきたのはノゼハの声だった。
「何」
厳しい声。
静かに怒りを発していたノゼハはサトルが視界に入ると不愉快そうに眉をしかめつつ
腰掛けていたフェンスから床へ降りてきた。
向かいには息をつくサトル。
暑いはずの気候は息をひそめ、雲で覆われた空のせいか
あたりは微妙にくすんで見えた。
涼しい風。
「何」
もう1度たずねる。
すると息を少し落ち着かせたサトルが応えた。
「いや…とくに、…何がどうとかではなくて…」
「怒ってるって言ったでしょ?
トモがいいとこまで言ったのに」
ふわりと跳ねる。
眉を潜め、にらみをきかす。
しかしサトルは臆せずに見つめ返した。
「そうじゃないだろ?」
見開く目。
ノゼハは一瞬言葉につまると息を呑んで髪をほどいた。
風にまって髪が揺れる。
深く、濃い髪色は一本一本美しく揺れるとすぐに落ち着いた。
「どうでもいいって言いたいの?」
同じような立場だからだろうか
自分も上手くできずもどかしい時期があったからか
ノゼハは下を向いて顔をそらした。
足音。
「そうじゃなくて」
落ち着いた、それでいて妙な雰囲気をもつサトルの声。
これを聴くとどうにも抗えなくなる。
サトルは静かに近づいた。
無神経な動作でノゼハの硬く握られた右手をとると無理矢理開いた。
「…」
そこに握られた居たのは髪留めのゴムと、その上からまかれていた赤い紐。
「これのこと」
赤い紐を摘み取る。
サトルはそれを左手にくるりと2回巻きつけ、むすぶとかざして見せた。
「懐かし」
言ってうっすら微笑むサトル。
しかしノゼハは恨めしそうに視線をあげた。
「解ってたならどうしてあんないい方したわけ?
うちらにとって。
…すくなくとも、私にとっては中々大切な物なのに」
「いや、ごめん。
忘れてて」
言ってふざけたように笑いながら頭をかく。
その腕をノゼハの力ない手が叩いた。
「思い出したわけ?」
「……一応、あのふざけた台詞と一緒に」
「バカ」
ノゼハの腕がするりと伸びる。
両腕がしなやかに首に巻きつくとサトルは笑って空を見た。
「んなもんいつまでももってんなよ。
部活はもう安泰だろうし」
「バカ…これがなくなったら当分飛べそうに無いもの」
ぽんぽんと、あやすようにノゼハの背を叩く。
サトルは無け無しの気遣いを引っ張り出した。
「…ばーか」
「…バカ」
思い出す。
トモはのちに聴くことになるのだが、それは数年前。
中高と続くこの学校で、入学したてのサトルとノゼハとユウがこの部を作った頃の話。
サトルもユウも言わなかったが、部を作る一番の理由はノゼハだった。
居心地の良い居場所を。
「飛べる事」が知られ一時あたりからの視線がとても痛かったころ
途方にくれたノゼハは屋上でサトルに会った。
励ますつもりかしらないが、ゆったりとした、でも変な顔で差し出される手。
その中に見なれない、きれいな赤い紐。
そして顔を少し赤くして搾り出される言葉。
「これやるから、もすこし頑張れ」
部がどうしてそんなに大きい存在かと言われればまた不思議な話だが
とにかく心地よい空間だったのだ。
そんなところが欲しかった。
不安定な自分の、居場所作り。
「サトにとって部がどんなとこなんだか知らないけど
少なくともあそこは居場所なんだから」
昔を思い出し、いう言葉。
嫌な目、辛い目にあえば部室に行き、気力を回復したものだ。
回された腕そのままに
ゆっくりと背を叩く。
「大切さ」
するりと出たその言葉はふざけた口調で
相変わらず空を見つめへらへらと笑いつづけるものだから
悔しくてノゼハはまた言った。
「バカ」
ドアに背を預け、ほころぶ笑顔を押さえつつもどうしようかとトモは悩む。
二人が入ってきたときここに自分がいては気まずいだろう
しかしこのまま去るべきかいまいちふんぎりがつかなかった。
バランスを崩さぬようドアに手をついて立ちあがる。
どうしようかと深く悩んだ。
そのときだった。
"そのまま先に部室に帰ったほうがいいんじゃないの?"
「っ?」
慌てトモはあたりを見渡すが誰も居ない。
しばらく考え天井をみつめてから静かに笑う。
騒ぎ立つ心を押さえつつ階段を駆け下りドアへ向かってわらった。
「そうだね」
その後部室に戻りゴーヤーと親しく話していたトモが迎えたのは
髪を一つに結んだノゼハと
今まで見たことの無いようなへらへらとした笑顔で靴をぺたぺた言わせながら入ってきたサトル。
「え!?なに?
話せるの!?」
くすりと笑いながらトモは二人に入れたばかりのお茶を差し出した。
そろそろ帰ってくると思ったのは正解だったようだ。
「おかげさまで」
夕陽の色に静かに染まる部室で
顔を赤くそめてトモは笑った。
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いやっはー!楽しいね!いつものごとく私だけ!
これのもとネタは実は中2の頃にありまして
その頃はノゼハとサトルとユウと、あと名前だけの登場でしたマリさんのお話で
超能力がー、ラブコメがーっつなありがちなノリでした。
しかもそれを人様に放り出すという恐ろしいことをやってのけたため今手元には無く…ヒィ!
その次に同じ学校にいる別のひとの話を二本ぐらい書いた記憶が…
なんとも夢見がちな名前が多くて今困ってます(オイ)
ちなみにノゼハは漢字で乃是葉だったんですよー。なんだそりゃってな(笑)
サトルは悟、ユウは悠(多分…)、マリはまりあとかそのへんだった気が…
とにかく今も昔も楽しく書いていたようです。
で、なんでそんなネタを今ごろ引っ張り出してきたかというと
高校に入った頃、同じクラスで知り合った之さんに挿絵を頼んで「話書くぜー!」
とかなんとかいったくせに二年足踏みした上、既成なキャラデザもどきまで回して描かせたのに話ができてなかったということで
今更ですが今しかない!というわけで描いてみました。
途中まで書いていたものの気に食わないので最初から。
相変わらずつたない文章。
主人公…だれだよ…え、なに?青春なの?ゴーヤー?
自分でもツッコミ所満載です。
タイトルESPYは英語で『見つける、探知する』とかいう意味でして
ESP:超能力とへんてこに掛けてみました。
あああああ・・・・
多分わからないけど飛べるってのは良いことばかりじゃないんだろうね
ひねくれたこの世界に暮らす様々な人々の様々な視線が突き刺さって行ったんだろう。
そんな中純粋に自分を見つめてくれる友人とか、そういったものが支えで、頼りだったんだろう。
ちなみに中学時代はノゼハはもっと若く、明るい感じで(何)
サトルは素直な好青年で
ユウはそんなサトルとノゼハが好きな冗談の通じる奴でした。
一番変わってないのはユウでしょうかね、アメリカノリです。帰国子女です。
ありがちで夢見がち。
でもアイデアに溢れた時代。
成長して得た物もあるけれどきっと失った物も多いんだろう。
一つたりとてこぼさぬように。
でもね!頑張ったのよ!
完成するまで一晩!
じっくりやらせていただきました。
気が向いて暇になったら、いつか落書き絵でもかいてやってくださいな、之さん。
おくれてすんません。
1度たりとも忘れたことはありませんでしたよ〜
では、お読み頂きありがとうございました。
(2003/09/23....haruco)