ORIGIN
あたりは暗くなり、街頭に照らされながらノゼハ一人家路を急ぐ。
入学してもう一月以上たつ
いい加減部活を決めてしまおうと今日は剣道部に仮入部してみたのだった。
「ダメ…無理。あれは無理…。
重いし、思ったよりも汗かくし…」
慣れない筋肉をつかって早くも筋肉痛になりそうな予感がする足を無理やり動かし歩みを早める。
調度ノゼハが星空を仰いだときだった。
「ノゼハじゃん」
後ろからかけられる声。
聞きなれた声にゆっくりとノゼハは振り向いた。
「サトル?
随分遅いんだね、仮入部でもして…た…の…?」
振り向いたところにいた人が予想と違ったのでノゼハは言葉をつまらせた。
そこにいたのは見知った男子ではなく
暗い中でも淡く光る髪と青い瞳、そしてノゼハより頭一つは高い背。
思わず目を大きく見開いた。
「どけよ、邪魔だし…」
そういって背の高い男子を押しのけ後ろから小柄な男子がもう一人、顔をのぞかせる。
「あ…」
その見知った顔に思わずほっと息が漏れた。
それこそ本当の声の主、サトルであった。
しかし後ろから顔を出したサトルを押しのけて長身の男子は身を乗り出すと
ノゼハに向かって浅く会釈した。
「こんばんわ」
「あ…え?あぁ…こんばんわ」
挨拶をされ当惑するがとりあえず返事。
ノゼハ長身の男子の背から時折見える小さな頭に困った顔をむけた。
「えと…サトル、誰…?このひと」
ノゼハがそう言ったところでやっとサトルがしっかり顔をだす。
そのまま前に出るとノゼハの方へと歩いてきた。
「友達。
同じクラスなんだよ、ハガ。芳賀…なんだっけ?」
「悠」
「うん。芳賀 悠、だって」
たどたどしく長身の男子を紹介する。
ユウと呼ばれた男子は再び小さく会釈をすると愛嬌のある笑みを浮かべた。
「あ、ども…。
えと…柳田です。柳田 ノゼハ」
「え?柳田…何さん?」
「ノゼハ」
一瞬困った顔で聞き返す悠にノゼハは苦笑いして応えた。
よくあることだ。
「で?サトルはどうしてこんな時間に帰りなの?」
「仮入部。
お前も?」
「うん。
今日は剣道部。
ちなみに先週は茶道と弓道とテニス、先々週は美術と英会話とバレー」
結局どれもダメだったよと小さく付け足す。
相手も似たような結果だったらしく苦笑いして返した。
「それで…柳田さんはどうして祐川と知り合いなの?」
祐川…久しぶりに聞いた幼馴染の苗字をすぐには理解できずノゼハは数秒考えた。
ああ、と小さくいってからまた苦笑い。
そして「家が近いの」と短く応えた。
つたない会話。
仮入部で得た成果なりなんなりを話しながら歩く三人。
途中でノゼハ思い立ったように歩調を速めた。
数歩先を歩いてからノゼハはくるりと振りかえる。
並んだ二人の男子があまりにも違いすぎて笑えてきた。
ユウはすらりと身長が伸びていて、だらしない歩き方だが中々制服も様になっている。
しかしサトルはといえば悠よりも明らかに背が低く、制服は馴染まず、いかにも「着られている」といった感じ。
あんまりにもノゼハが笑うものだからなんとなく察したサトルは声を大きくして「なんだよ」と騒いだ。
「あー!もう、部活なんてきまんねぇよ」
投げやりにサトルは夜空に叫ぶ。
仮入部こそするものの、気に入る部活は一つもない。
どうしたものかと他の二人を見た。
「つくっちゃえば?」
冗談半分にユウが言った一言。
それが、前身。
中高一貫なこの学校で、上に何百といる先輩やらの事を全く気にせずいられる屋上で
三人はそのうち弁当を一緒に食べる仲になる。
季節は初夏、初めて三人が揃ってから一月ほどたち、誰も苗字で呼ばなくなっていた。
「ねえ、だからつくろうぜ。
やっぱこうなんつーの?スポーツって感じの」
「嫌だよ、俺つかれんの嫌だし。
折角なんだしさ、もっと楽なのつくろうよ」
「何それー。
それじゃ部活の意味なくない?」
ユウはおにぎり、サトルはラーメン、ノゼハはサンドイッチ。
それぞれほおばりながら今日も今日とて同じような話をしていた。
「そういえばお前クラスのやつと食わなくていーの?
ほら、女子とかよくダマになってんじゃん」
「ダマってなによう。
知らない、いいんじゃない?女の子達、仲良い子いるけど皆昼になるとばらばらだもの。
今更どこかに割って入るのも、ねえ?」
そのとき、屋上のドアが遠慮がちにあいた。
ギィ…
ゆっくりと開けるものだからいつも以上に音が気になる。
三人はゆっくりと振り向いた。
「あ、ごめんね、柳田さーん」
すきまから顔をちょこんと出したのは確かノゼハのクラスの子だった。
黒いおさげに眼鏡が印象的で
それだけでクラスの委員長に無理矢理ならされたのを思い出す。
内気、というかそういった仕事が苦手らしく中々上手くこなせないのを見かねて
手伝うようになったのはつい数週間前のことだ。
「誰?」
「うちの委員長。
マミちゃんどうしたのー?」
丁寧にサンドイッチを包むと床に置き、ノゼハはゆっくりと立ち上がった。
「あ、ごめん。
えっと、なんか体育祭が来月の下旬にあるんだって。
それでプリントが配られてさ、選手とか応援とかクラスでだすんだって。
悪いんだけど一緒にちょっとやってもらえないかと思って」
「ああ、いいよ。
全然。
クラスか〜まだ全員の名前覚えてないのに」
「私も〜」
少し立ったまま打ち合わせ。
その会話を背にサトルとユウは呑気に昼食を続けた。
ユウは良く通るノゼハの声を聞いて少し笑った。
「なあサトちゃんさあ、ノゼハってばお人よしなんだねー」
「そう?知らねえよ」
「そうだって。面倒くさそうなのに良くやるねぇ」
「知らねえってば。
いいんじゃないの?別に」
そうだけど、とユウは笑いながらいった。
何がそんなに面白いんだか、サトルは小さく言うと食べ終えたラーメンの器をコンと床に置き寝転がった。
ユウも同じように寝転ぶ。
「あ・・!」
ノゼハの声。
二人がなんの気なしに振りかえると紙が振ってきた。
「あ!あ!サトルとって…!
それメンバー書く大事な紙!」
慌てて言うノゼハの声を聞き、サトルは顔面に手をのばす。
しかし一歩遅く紙は風にのりはらりと宙に浮くとそのままフェンスの方へと床についたり離れたりしながら進んでいく。
「あ!もう!!」
ノゼハは懸命に腰を低くして追いかける。
しかし紙は嘲笑うかのように素早くはらはらと宙を舞いつづけ
終いには大きな風に乗りフェンスを超えて校庭の真上へ踊り出た。
「あ!」
「バカ!!やめろ!」
二つの声。
ユウは思わず立ちあがり手を伸ばし
おさげの委員長は目を丸くし、思わず書類を全部床に落とした。
サトルは大きく叫ぶと駆け出し
ノゼハは強く床を蹴り、フェンスに手をかけ勢いをつけると
そのまま校庭の真上へ屋上から飛び出した。
「やだ……!」
目をつむった委員長の声が響く。
ノゼハの姿はフェンスの向こう、地上よりはるか高いところで紙を掴み、
委員長の落とした書類がバタバタと風に舞った。
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ふふふ〜勢いでやってしまいました。
ESPYよりも何年も前のお話。
部活ができるくだりでございます。
気が向いたら書いていこう…なので原点"ORIGIN"でございます。
少し厳つい英語かな〜とも思ったのですがなんだか妙にフィットしたので。
この時点で三人とも中1なんですが…なんだ!この中1っぽくない奴らは…!
どうしたらもっと幼くなるんだろう…難しいです。
書いて書いて、勉強していくしかないんだろうなァ。
ノゼハはもう典型的な私の書く女の子、と言った感じで
面倒見が割りとよさげな、元気で強気な女の子です。
スバルとはちょっとちがうよなぁ、あっちは妙に子供っぽくも大人っぽいです。
人格を描くって難しい。
(2003/10/04....haruco)