足跡篇13 獅子の心を持ちうる小熊
顔を上げてみればそこには寝顔。
ゆっくりと目を伏せればパキンと薪がはじける音。
ユミレオは閉じかけた瞳をゆっくりと開けるとのそりと起き上がり音のしたほうを見た。
そこには暖かく燃える炎と
赤い光に染まる黒髪
薪の番をしながら少しばかり船を漕いでいたハヤテはふとユミレオの姿に気づき
情けなく笑った。
焚き火の近くによればじわじわと体が温まる。
ユミレオはハヤテの足元にのそりと座ると顔を見た。
「なんだよ」
なんとなく、とユミレオは目でいいあくびをひとつ。
珍しくハヤテが頭をなでた。
「スバルは?」
寝ている
「ふ〜ん、まあいいや。どうせハトも寝てんだろ」
言われてそちらを見てみればスバルの後方にでん、と転がる足。
小さく生白いその裸足はハルベットのものに違いなかった。
「やっと勢矢まで来たけど別に船大丈夫だっただろ?」
なんだかんだで船に乗ることになったもののユミレオが船に乗るのを嫌がったのは記憶に新しい。
憮然とした表情でユミレオは横を向いた。
ハヤテは笑うとそのままがしがしと頭をなでる。
ユミレオはなんとなく癪に障って噛み付く真似をした。
ハヤテは手を引っ込めヒヤヒヤとするがそのままに笑う。
ユミレオは見上げた。
次は、どこへ行くつもりかと
「あ?次どこに行くかね、大抵スバルが決めるからなぁ
多分お城じゃねえ?あんまり潔癖そうだったらお前宿置いてくから」
宿はいやだ。
店主は妙に足音を小さくして廊下を歩くし、外に繋がれれば首は痛いし皆妙な目で見る
無神経な子供が面白そうに触るので一応おとなしくしておけば
大人は大騒ぎしながら慌てて子供の首根っこを掴み遠ざかる。
ユミレオに非はないのに周りは嫌な視線で見つめるのだった。
「そんな顔したって駄目だからな。
お前は熊さんなの。森の熊さん。
熊さんは大抵凶暴で、人間のお肉だって食べちゃうんだから
そう考えると普通恐いだろ?食べられるかもしれないんだから」
そんなことしない
うさぎとかしか狩ったことない
「人間の肉食ったことあるだろ?おっかさんが狩ってきたのとか」
ユミレオは少しうつむいた。
「美味かった?」
硬かったけど…まあ美味かった
ぺろりと下が動くのをみて、ハヤテはため息をついた。
「んじゃやっぱだめだよ。
っつか美味いとか言うな、美味いとか。
俺も熊肉好きだけど?」
お前なんかスバルが良いっていったら食ってやるのに
「熊肉…久しく食べてないなぁ」
二人はお互い睨み合った。
スコン
「あで!」
空洞な何かがハヤテに投げつけられた。
空き缶らしいそれは頭にあたるとコロコロと地を回った。
「っにすんだよ!」
足元へ転がった空き缶を荒々しく掴み飛んできた方向を見た。
「馬鹿!どうしてユミレオ食べるなんていうの!」
スバルだ。
寝起きらしく顔は寝ぼけたままだったが口調は荒く
第二陣へ向け次の空き缶を構えていた。
野菜のソースが入っていた缶を洗っておいたものだった。
「っつか投げんなよ、あぶねえじゃん」
「ハヤテの発言のほうが危ない!」
ユミレオはゆっくりとスバルの足元に伏せ
交差させた腕の間に鼻の先を押し込んだ。
静かに目を伏せる。
「あ、ユミレオ寝ちゃうの?」
もう、今日は疲れたから
「そう?寝ちゃうの。
もう夜も遅いものね。
あたしも何か飲んでから寝ようかな」
頭を優しくなでる。
ぽんぽんとリズムよく触れる手をなんとなく楽しみながら
目をうっすら、開いたり、閉じたり
「ハヤテ、なんか飲む?っていうか火の番しててくれたんだ」
「あ?まあ今日はちょっと冷えるしな。
一応冬に入るわけだし」
「ふ〜ん。
で、何か飲む?」
「じゃ、コーヒー」
はいよ、と答える声。
しばらく続く談笑。
ユミレオはそっと眠りに入る。
獅子の心を持ちうる小熊
言った少女は火が消えるそのときまで優しく頭をなでつづけ
笑う少年は火を消しながら静かに言葉を投げかけた
「おやすみ」
おやすみ
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はい、ついに身近な方になりました。
くまたーん。
なんかこう、こいつら三人には以心伝心みたいな呪いがあるんです。(呪い?)
そんな三人。
ハトとかヒィさんとかはのけものじゃないんだけど
なんとなく、こう、三人には妙な、家族にもにた空間。
それに彼らはその中に入りたいなんて思わない
外から見ているのが一番面白いかもしれないからね
次はだれだろうね。
どっちがいい?
(2003/12/17...haruco)