足跡篇9 砂王
ずらりと並んだ近衛兵達。
自分の目の前に広がる真っ赤な絨毯。
右隣に吊るされた鳥かごには美しい尾をもつ白い鳥。
一通り朝の用事をすませて玉座に座るとすぐに長年つかえる執事が沢山の書簡を運んできた。
「今日はまた…多いな」
書簡の山を一瞥して視線を窓の外に向ける。
城の最も高いところにあるこの部屋から見える物といえば
本日の悪天候をそのまま示した灰色の空と雨
遠くに見える砂漠のはずれに天候に関係無く賑やかな城下
そして遥か遠くにそびえる山と霞むような海だった。
「本日は月末で報告書やらも多いですから
…それにもうすぐ年の瀬ですからね、年明けの祭の企画や
来年の暦司の選別やらで多いんでしょう」
周りの執事やメイドなどと同じく黒い衣を身にまとい
きっちりと髪の毛を後ろに流している。
胸に小さく輝くのは長年何代にも渡って城に伝えた証であり彼の誇りであった。
城の召使いを束ねる彼は60を少し過ぎた頃で
決して若いとは言えなかったが
時に見せるはつらつとした姿と張りのある風貌、声で城に規律と活気をもたらしていた。
鼻に小さく乗せた丸めがねは長年使ってきたものである。
彼はそれを少し持ち上げて眼鏡を掛け直すと
別の若い召使いの持つ大きなトレーに手紙を数通ずつわけておいていった。
「こちらが国内の定例報告。
こちらが暦司関係の書簡。
こちらが國行事の書簡。
そして…それ以外の國当ての書簡になります」
執事は言い終わって王を見据えた。
「年末ということでかなりの量がありますがいずれにも目をお通し下さいますよう。
いつものように王ご自身宛の書簡は一まとめにしてお部屋へお送りしてありますので。
あ、それと…今日は特別な書簡が1通。
王が興味を持たれるかと思いまして別にしておいたものですが…」
そういて執事は丸い筒形の官に入った書簡を出す。
色は金。
数ある書簡の中でも目立つもので報告書などとしてではなく
相手に敬意と尊敬の意を示し特別な時によく用いられる色だった。
それを丁寧に執事から受け取ると王は官の底や側面を慎重に見まわした。
裏を見てみれば掌空の印。
「おお!あの二人からか!」
嬉しそうに王はいう。
執事は深々と頭を下げた。
王は中から紙を取り出すと嬉しそうに広げ目を大きくして読んだ。
時々おぉ、おぉと相槌を打ちながら読み終えると満面の笑みを浮かべた。
「無事に陣の回収が済んだそうだ。
やっぱりサナにあったらしいな、どうやら地下にもう一層あったらしい…
あの湿気と砂漠はきついが年が明けて落ち着いたらもう一度調査に出してみようか。
…なあ、サナの入り口に老婆が住んでいたというが…そうなのか?」
文面を読みなおしながら王は問う。
一瞬執事は困った顔をしてから「存じ上げません」といった。
少しあたりがどよめいてから近衛兵の中でも背の高い女性が一歩前へ出た。
「お許し下さい。
昔から私の村にて伝承されている言葉があるのですが」
「…お前はどこの出だ?」
「サナの洞窟を更に南へ少しいったところにあります、キヌの出であります」
「…なるほど。
なんだ、いってみろ」
王の許しを得て、女は安心したように一息つくと
きっと顔を前に向けた。
女の束ねた赤髪が揺れる。
「あの…サナの洞窟には門番がおりまして、入る者を見るというのです」
「見る?」
「はい。
その門番は数多の声を聞き意思を感じとり、
導きにより各地を回る、と」
「なんだそれは…?」
「数多の声というのは人の声のみにあらず自然の声、死者の声、幻影の声などといわれています。
その多くの声を聴くらしいのです。
実際私が見たことは無いのですが
時に友人が洞窟の周りを訪れると老婆を見かけ
別の友人が洞窟の周りを訪れるとなにも見ない
いつもいるわけではない
門番といっても入るのを拒むわけでもない
ただ見て、それでいて多くの場所に現れると」
王は眉頭を押さえて下を向いた。
「むずかしいな…まあいい。
ありがとう。
とにかく無事に回収が済んだそうだ。
怪我も無し、ハンカについたようだから今ごろ船に乗って海を渡っているだろうな」
「王はあの者たちが大変お気に召したようですね」
にっこりと執事が笑っていう。
王は笑いながら他の書簡へ目を通していった。
「ああ、彼らは…なんだろう面白いからな。
うちの戦闘部に決闘を申し込むとは…さすが掌空の國司といったところかな?」
思わずあたりに溢れる苦笑い。
執事は戸惑ったように口を挟んだ。
「……さあ?
掌空は何を考えているのやら、陣集めに何かあるのですかね」
「…」
少し考え込むようにうつむくと王はにやりと笑った。
手近な紙に何やら書きなぐっていった。
そこには乱雑な字で期間や予算が書かれてある。
それを乱暴に執事に押し付けると「編成しろ」と低く笑っていった。
執事はその紙を見て苦笑いする。
「早急に。
大臣に手渡し致します」
『全國古代陣把握調査』と書かれた紙をもって執事は足早に部屋をでた。
周りの兵はしばらく目を見開いていたが
すぐに意図を察して笑った。
結局何をたくらんでいるのか知りたいだけないのだろう。
「それにしても本当に戦闘部が負けるとは…」
「ああ…なんといったかな、彼は」
ぼそりと漏らした近衛兵の声に王が応えた。
「あ!…えっと…ヒイラギ…、ヒイラギ・クテンです」
「もう長いこと務めるのか」
「いえ…私の弟と同期ですので…次の春で三年目になるでしょうか」
「ほう…
強いのか?」
近衛兵はすこし考えるように腕をくんだ。
「ええ、強いですね」
満足そうに王は笑う。
そして小さく呟いた。
「修行がてらということにでもして
いざとなったら彼に任せようか」
望むと望まざるに関わらず
たぐい寄せられる糸のはしには常に彼。
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と、いうわけでやっぱり訳のわからない話になってしまった第九段。
今回は砂の王様になりました〜
う〜んどうなんだろうね…
難しいです。
捕捉捕捉〜。
ヒイラギさんの苗字(?)はヒイラギ関係から来ています〜
ヒイラギは木犀(モクセイ)科なんですよ〜キンモクセイとかのモクセイ。
適当に並び替えてセイモク。井目っつのは碁盤の九つの点で九点(クテン)。んなわけでクテン。
宮中という意味もクテンにはあるので宮中の別の言い方、ココノエにもしようかと思ったんですが
妙に南国なので(え!?)クテンに。
う〜ん。
う〜ん?
頑張りますよー!
本篇ではいよいよ上陸です〜
(2003/09/13....haruco)