28 陣の力



目を開けてまず思ったのは額にはりついた前髪が邪魔だということだった。

「ここ数年色薄くなったりなんてしなかったのにな…」

濡れそぼった髪をつまみあげ呟いた。

ゆっくりと体を持ち上げるとスバルはあたりをキョロキョロと見回した。

「ここ…どこ?」

 ぺしっ

小さくつぶやいただけだというのに後ろからはたかれた。

「ざけんな」

「ハヤテ」

ぺたりと座りこんだまま上を見れば同じくずぶぬれのハヤテ。

ハヤテはスバルの近くにカンテラを二つ並べるとタオルをほうった。

「なんかさ」

タオルで頭をふきながらスバルは言う。

しかしスバルが自分では上手くふけないのを見てハヤテはタオルを奪い取りふきだした。

「うちらってこれから洞窟行くたびに水にはいるのかね」

右を見れば小さな湖。

天井に穴が見えることからそこから落ちてきたのだと悟った。

冗談じゃねぇ、とハヤテ。

ゆっくりと考えてみればどうやらハヤテが気を失った自分を陸に引きずり上げてくれたようだった。

「さて、どうなんだよ。

 本当に穴なのか?"サナ"って」

こくりとうなずく。

「方言だと思うんだけどね。

 全然使わない言葉なの。

 昔に親戚に教えてもらってさぁ…

 急にね、思い出したの」

「そっか」

でかしたとでもいうように、ハヤテは頭をなでてくる。

スバルは悟られぬように頬を膨らませた。

どうにも馬鹿にされているというか、子供扱いされているような気がしてならない。

それでも妙になれたその手を振り払うわけにも行かず

そのままで放っておいた。

「今度からは洞窟の名前ちゃんと考えてから行こう。

 じゃねえと焦ってばっかじゃん、俺」

「焦った?」

「とっても」

笑って聞いただけなのに。

とても強く小突かれた。



さめぬように体を乾かしてからカンテラをそれぞれ持つと、

二人は湖と反対の方向へ歩き出した。

「焦ったよ、お前空中でいきなり気失うんだもん」

「空中で?

 水のショックでじゃなくて?」

「ああ、俺が足掴んだまま一緒に落ちてちょうど手を掴んだところでカクリ、だよ」

カクリ

そのときのスバルの様子を再現するかのようにハヤテは首を前にたらした。

「ごめ〜ん。

 なんかこう気持ちも吸い込まれた感じ?」

「なんだよそれ〜」

笑って言いこそするがきっとたいそう驚いたのだろう。

簡単に想像できるハヤテの様子にスバルは意地悪く笑った。

「あ!」

ハヤテはいきなり声を上げた。

それに驚いてスバルは足もとの岩気づかず躓き、こけた。

「なに〜?」

軽くひざをはらうと恨めしげに見上げる。

「あのな、この間泰海で陣とっただろ?」

「うん、とったね。

 飼いならす時ちょっと足切ってハヤテが今度からはうんぬんっていったよね」

「そうだっけか。

 まあいいや、そのとき、お前が1日で怪我治したあの時」

うん。

スバルはいぶかしげに頷いた。

「それが何?」

「あのとき陣飼いならしてお前の物になったんだろ?」

「そうだね。

 まあちょっとニュアンス違うけど。

 うちの物っていうか単に仲良くなったというか許可をもらったというか・・で何?」

「その陣ってどんなものなんだ?」

ああ。

スバルは口をあけた。

必死にハヤテは喋る。

「だってさ、陣って力の出入り口な訳だろう?

 水の陣だったら水の力がでたりして

 俺でも使える・・使えるってへんなのか?まあいいや

 そんな空の陣だって鍵になるわけじゃないか

 そしたら泰海の陣だって何か出来るんだろう?」

「そういうことになるね」

「何ができるんだ?」

沈黙。

スバルは困ったように額を指で掻いた。

「ああ、それね。

 実はサァ…結構とんでもないものらしくて…どうしようかなぁ…

 言ってもいい?」

「言ってくれよ」

「じゃあいうけど…」

スバルは息を吐いた。

「あの陣は水とか火とか、そういう属性とかがなくてただの"力"なの。

 掌空のみたいに鍵になっているんじゃなくて今度はちゃんとした力。

 相当…力吸い取るものだから・・大きいもの…だと…」

沈黙。

ハヤテは目を見開いた。

「相当って…使ったのか?」

「使えないよ…恐いもん。」

「それは…山ふっ飛ばしたりとか、海割ったりとか。

 そういう、力…?」

焦ったようにいうハヤテにスバルは首を横に振った。

向かいから聞こえる安堵のため息。

「そういう類ではないんだけど…」

 カタリ 足もとの石が崩れた。

「これは…召く言葉なの」

「まね…く?」

「うん。

 えっと…召喚とかいうかもね。

 それと同じ」

「何を呼ぶんだ?」

「さぁ…?

 ただね、泰海のでは多分呼べない。

 パズルのピースでしかないの」

訳がわからないとでもいうように首をかしげるハヤテ。

スバルは苦笑いした。

「この陣のスタイルで行くと多分陣中と足元に円が浮かぶと思うの。

 だけど泰海のだけじゃ全然円にならなくて…なんていうのかな、ケーキの1ピースみたくなるの」

「わかるのか?使ってないのに」

「完成したとき浮かぶ陣は既にアガの洞窟でみたからね。

 あの時は円が書いてあったけどきちんと読み取れたのは実はそこの部分だけなの。

 あ!っていうかね、それはあたしが妥協したとかじゃないんだよ?

 陣がなんていうの…?浮かび上がった感じ、立体的にね。

 そこの部分だけ、立体的に触れることが出来た感じなの」

理解するのに相当苦しさを伴ったようだがハヤテはうなづいてみせた。

「…とにかく、あれだけじゃ陣は完成しないってことだよな」

「まあそういうことになるね。

 使えないことも無いけどどうせ使えない小魔物とか小精霊とかがでてくるんじゃないかな。

 できそこないな陣だし。」

「あとどのくらい陣があれば完成するかわかるのか?

 あと1つとか、2つとか」

数秒スバルは考えた。

「まあ後12個だと思うよ?」

「じゅっ…!

 んだよそれ…」

「多分あってるよ、全15ヶ國っつっても実際にあるのが14の國でしょ?

 そのうち掌空のが鍵の役目だからあと13國。

 奇数の分割陣は古い法則のもとだと無いのが大抵だから読み取れた陣の大きさから考えると12國だと思う」

もはや言っていることについて行けなくなったのか、ハヤテはため息をついた。

スバルはやっとそれをみて笑う。

前を見ればどうやら行き止まりのようで暗いが確かな壁が立ちふさがっていた。

途中に分れ道もなかったので不安になる。

スバルは駈け寄りカンテラをかざしよく見てみた。

そしてほっと一息。

「行き止まり…じゃあないみたいだね」

ハヤテは理解できずにぶつぶつ呟きながら後ろをゆっくりと歩いてくる。

スバルは満面の笑みでハヤテを迎えた。

「そんなに考えないで。

 アガにあった陣は召く陣でそれはまだ未完成。

 おそらく完成にはあと12國分の陣が必要…OK?」

「…OK」

苦笑い。

ハヤテは少しばかりすっきりしたように顔をあげた。

「なんだよ・・行き止まりか?

 わざわざ落ちたのに。

 やっぱ落ちる必要なんか無かったんじゃねぇか畜生。

 ここで死んだらどうしてくれんだよ」

少し楽観的に考えていたせいかどんどん言葉がついてでる。

スバルは少々ふくれながらも眉をあげ、見てみろといわんばかりに行き止まりの壁を指差した。



そこには土で汚れてはいたが

以前確かに見た石の扉があった。













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やったー!やっと扉にたどりつけました!

そしてやっと泰海の陣の役割がさだまりました。

ラブ、行き当たりばったり。

こんなのでいいのかしらと不安になりつつもかなり強引に書き上げてしまいました。

春休み中に三話といいつつ今日はは9日始業式の日ではありますが

まあ日付も変わったばかり、登校前ということで許してください。

なんだか説明くさいスバルだったのでもっともっとあそばせてあげたいです。

今度はどんな人がでてくるんだか…

やはり前途多難なようです。



楽しくいこうぜ ベイベェ(何)







(2003/04/09....haruco)