27 サナの洞窟
アガの洞窟と同じように洞窟の入り口の近くに小屋があった。
しかしそれは自営局らしい看板も無く、石がつんであるだけの簡単なものだった。
「誰かいるのかな…」
駈け寄り洞窟の入り口まで来たところでスバルは小屋を見つめた。
ハヤテは洞窟の中を見つめる。
目を閉じれば中から感じる冷たい風。
目を開ければ尽きることない暗い闇。
さらさらと流れる自分の黒髪をそっとなでた。
足元に動く影。
「どうしたよ」
見下ろせばユミレオが体を小さくして寄せてきた。
普段からは想像できない様子にハヤテは眉を寄せるとそっと頭をなでた。
「暗いところがこわいのかよ…。
あの、奥にいるものか?
…まあいいや、どうせお前いても邪魔だろうし。
ここでまってろよ」
ブーツごと足をかまれたのと同時に、スバルが叫んだ。
「ねぇハヤテー!!人いるよー!」
のんきな大声。
ゆっくりと振りかえれば先ほどまで隣りにいた影が遠く小屋の入り口にいた。
小熊を足に引きずりながらゆっくりと歩いていく。
近づけばスバルはちょいちょいと手を振った。
「どうだろう」
無理矢理戸の隙間に頭をねじ込み中を見れば中には一人の老婆。
揺り椅子に身を任せ目を伏せていた。
「生きてる?」
「いや、さすがに生きてるだろ・・・椅子ゆれてるし」
「だって動かないよ?」
「椅子動いてんじゃん」
「おばあさんだよ、バァカ」
ハヤテが言い返そうとしたとき、ぴたりとふたりの動きが止まった。
動く視線。
老婆はゆっくりと、小さく目をあけた。
「ああ・・来たのか…いいよ、行ってきな」
小さな一言。
言い終わるとすぐに目を伏せてしまう。
「あ!ダメだよ・・ユミ」
老婆が目を伏せるや否やユミレオは二人の間をすり抜け小屋の中にはいってしまう。
そのまま椅子の足元に丸くなるとちらりとハヤテをみた。
「ああもう・・どうしよう」
「いいじゃん、行こうぜ。
なんかおばあさん行ってきなとか言ってたし…ほら」
言われてみればそっとだが、ユミレオの頭をなでる老婆。
スバルはふわりと笑った。
「では、行ってきます」
戸が締まると中には暖かい空気が残り、日差しが優しく覆った。
ユミレオは耳を一回ぴんと張ると静かに伏せた。
「さて、入ってみたはいいけど今度は見事にヒカリゴケがないねぇ」
「上手くつかないんだとおもうよ。
このへんの土、ちょっと特別みたいだし」
二人してカンテラを高くかざしながら暗い道を歩いた。
しかし歩けど歩けど道の太さは変わらず曲がることもない。
かろうじて見える入り口がだんだん小さくなることでやっと進んでいることが分るほどだった。
「どうしよう…とりあえず道なりに…ってうわ」
突然きれる言葉。
何事かと思ってみてみれば目の前に大きな穴。
あまりの暗さに気づかず見過ごす暗さだった。
「あ〜…どうする?」
嫌な予感。
ハヤテは肩を上げた。
その穴は道の端に開いており、とても深いようだった。
一方洞窟はまだまだ続くようだった。
「穴ねぇ…なんか落としてみるね」
意見も聞かずにスバルはあたりに落ちていた石を拾うとそっと放り投げた。
沈黙。
沈黙。
沈黙。
何も聞こえないかに思えたが小さくぽちゃんと音がした。
「ねぇ」
「ダメ」
「まだ何も言ってないよ」
「言わなくても分るからダメ」
スバルは上目遣いで見上げたがハヤテの睨みに口を閉じた。
ふと目を閉じればスバルの耳に声が聞こえてくる。
「何…目ェつぶってんだよ。
あぶねぇぞ」
「声がするの」
「あ?」
目を閉じて耳をすます。
何故か空気が穴から流れてくるような気がしてならない。
道の端にあるとはいえ大人が寝転んだよりも大きい穴はまるで誘い込むかのようだった。
「何か聞こえない?」
「わかんねぇなぁ」
不思議な感じはするけれど、言おうとハヤテは目を開けた。
ぐらりと揺れる体。
上へと流れる髪。
ゆっくりと開く口。
スバルは穴へと倒れていった。
「おいっ!」
慌てて身を乗り出し必死で手をのばす。
ガクッ
あまりに咄嗟なものだったから慌てて掴めばそれはスバルの右足で
スバルは右足をつるされた状態で穴の壁に強く叩きつけられた。
「あ」
小さく漏れる声。
ゆっくりと瞳を開き、背中の痛みを感じ取ると眉をしかめた。
「いたぁい」
「っざけんな!」
消すように叫ぶハヤテ。
足を必死に抱えふんばってみる。
顎をそらし力をこめ、必死に叫ぶ。
「っくしょー!
何やってんだてめぇ!」
「吸い寄せられたの、この穴に」
「っざけんな!」
頭を下につるされているせいかだんだん気持ちが悪くなってくる。
ぶらんと両手をさげ、スバルはだらりと言った。
「ねえハヤテ」
「んだよ畜生!」
「知ってる?」
「知らねーよ!
ふざけんな!喋らせんな!
なんだよ!」
スバルはため息をついた。
「あのね」
小さく漏れる息。
ぶら下がるのもつらくなってきた。
下にか 上にか
果てしなく続くように思える穴を見つめながら
一言言った。
「サナってね
うちの言葉で穴って言うんだよ」
沈黙。
「何ィー!?」
気づいたときには足が緩んで顎も下がって
スバルと共に体ごと穴にすいこまれてしまった。
...............................................................
あわれハヤテ。
なんていうかいつにもまして訳のわからないものになりました。
どうしたものだか!
えっとつまり二人は穴に落ちたのです。
スバルはこうふらっと落としたかったんだけれど
結局がくんと吊るされたあげくハヤテに引き上げてもらうことも無く
一緒におちてしまいました…
いつにもましてなんだかなぁ・・という話…だった?(聞くな)
(2003/04/08....haruco)