25 任務の中身



静止の声がかかった時にはっとした。

かがみこむのと同時に伸ばした右手

その手に握られた細身のくない

つい先ほど威嚇のために空を凪いだ黒い刃は冷たいままに手に染みた。

自分の動作にたちすくむ。

「スバル!」

上から降る声。

上を向けば客席から身を乗り出したハヤテが顔を覗きこんでいた。

 「…」

 「おつかれ」

 「うん」

絞り込んでいた目の疲れをとるように頭を振る。

再び開いたときにあまりに多くの光りが入ってきたので手をかざした。

 「なんとかなってよかったな。最後。」

逆光になって表情が読めない。

 「…いろいろと怖かったぞ」

それは

 「負けちゃうんじゃないかって?

  それとも…」

 「それとも?」

あたしの戦う様が怖かったと?





ゆっくりと手を置く。

 「うわ…!」

慌てたようにスバルは降りかえり再び視線を上に向けた。

 「ヒィ」

ヒイラギは思いきり顔をしかめたままスバルをみた。

 「おつかれさま」

ゆっくりとうなずけばそれはもう満足そうにスバルは笑う。

スバルの真上、客席に視線を移せば同じく満面の笑み。

どうしてかハヤテの笑みはヒイラギをひどく苛つかせた。

喜びの笑いというよりもそれは、嘲笑に近い気がするのは気のせいだろうか。

 「これで旅の仲間だね」

 「残念だがそれはできないな」

唖然とする。

はっと気がつくとスバルは両手をぶんぶんと降った。

 「なんでさ!うそつき!!

  いいじゃないさ、一緒に来ても。

  そういってたじゃないの」

溜息。

スバルの頭を2回ほど叩く。

こんな風にする理由は、お前が一番よくわかっているだろうに。

 「考えてやってもいいといっただけだよ」

作り物の、悔しそうな顔。

先に城に帰った王を見送ってから再び三人は闘技場に客席に腰掛けた。

明かに気に食わなそうな顔一つと

眠たそうな顔一つ

苦笑いすると痛む背をかばいながらゆっくりと喋った。

 「まあ約束は約束だし、いつか追いかけてもいいとは思っている。

  だけど今はその時期じゃない。

  これくらいで勘弁してもらえないか」

基本はあくまで腰低く。

遠慮がちに頼んだせいかスバルの気はいささか弱まったようだった。

 「まあ色々とあるし、当分先とは思うが

  必ず」

 「必ず?」

 「ああ、必ず」

あやふやではあったがきっと守られるであろうその言葉にスバルは安心した。

じゃあ仕方ない、小さく言った。

 「ひとつだけ教えて欲しいことがある」

 「・・何?」

 「お前達は何故国司をやっているんだ?」

一瞬の間。

しかし目的を問われたと感じると二人は目を合わせた。

守秘義務は無し。

相手はいずれ仲間。

いわなくてはならない状態。

あきらめたように溜息をつくとハヤテはスバルをあごで促した。

同じように溜息。

ゆっくりとスバルは口を開いた。

 「うちらが掌空の国司だって言うのは知ってるよね?

  正式には紫司、単独令で小規模任務の国司を指すの。

  王下認令だから王様のささやかなお願いって所かな。

  …で、その任務は陣を集めることなの。

  各國に一つずつ、全部で14個あるの。

  で、掌空のは既にあるから残りの13個集めようって話な訳よ。」

 「で?

  集めてどうするんだ」

そんなことはどうでもいいとでも言うようないい方。

確かにこの程度のことは既にヒイラギに話したことがあった。

スバルは再び口を開く。

 「陣を…集めるのは…」

苦々しいとでも言うような口調。

 「伝説を本当にするため

  掌空に富をもたらすため

  勇気ある心と共に迷う事無き行動をし

  夢の中に埋もれる価値を再び世に」

 「なんだそれ」

 「王様の言った言葉だよ。

  任命されたときに賜ったの。

  意味、わかる?」

小さく首を横に振る。

スバルはだよね、と笑った。

 「すごく恥ずかしいから言いたくないんだけど。

  うちらは調査隊なの」

 「調査隊?」

 「そ。

  伝説があるでしょ?一國丸々財宝っていう。

  その架空の國は各國にあるという陣を集めて初めて降り立つことのできる國らしいよ。

  現在ある14ヶ國にこの架空の國が加わって全部の國を15ヶ國っていうんだって。

  まあ話によれば昔あったんだけど消滅しちゃった國っていうのが有力らしいけど

  とにかく陣を集めて『もしかしたらあるかもしれない』『財宝の國』を導き出せとね、言われたのさ」

顔を真っ赤にしながらスバルは言った。

ハヤテのほうを見れば目を合わせようとせずそっぽをむいたままだ。

唖然としてヒイラギは言った。

 「そんなあるかないかもわからないものを探すために掌空は国司をだすのか?

  その伝説は俺も聞いたことがあるがうちの國では『財宝の國』ではなく『白い楽園』だったぞ?

  研究者もほとんどいない、資料もない、ただ人の噂にのみ残る伝承をたよりに国司をだすと?

  まったく、いい気なものだ」

笑い飛ばす力すらないようにヒイラギは目を伏せた。

国司を派遣する用事はどの國でも山のようにある。

それこそ地方の監視や土地の開発。

國の問題がつきないように、国司も足りない状況なのだ。

人材、費用、時間をみつけて上手く出していくのでもなかなか難しく

特に東のほうでは今年は大雨により作物に被害が出ていて忙しいだろうに

それでもこの夢のような話に国司をだすとは。

馬鹿にするというよりは飽きれたといったほうが近かった。

 「そこまで言わないでよ。

  実際各國に陣はあるんだ…それはわかっていることなの。

  掌空にそれを記した書物があるし、実際かすかに各地に伝承とかもあるしね

  陣は集めてみるよ、まずはそれから

  掌空に余裕があってこんな任務出すのか、よっぽどな根拠があって出すのかわかんないけど

  受けた以上は仕事はするよ。

  まあ…極小任務だけど」

いくら反論してもやはり夢を探しているということが少し恥ずかしいのか顔は赤い。

任務に自信を持とうともあるかないかも分からないものを探しているとおもうと時折微妙な気持ちになる。

しばらくしてから大きな溜息と共にヒイラギは言った。

 「まあいい、掌空が何を考えているのか全く分からんが

  いつかおいかけてやることには代わりはないだろう。

  うちの國にもあるらしいから頑張って探してみろよ、陣」

王宮医務局にいくからと、ヒイラギは出入り口は別の、小さな裏口から闘技場を出ていった。

 「医務局って…そんなたいそうな怪我なのか?

  結構ピンピンしてたじゃねぇか」

吐き捨てるようにいうハヤテ。

 「そうでもないよ?最後の2発は、結構深く入ったから。

  前からはみぞおちに肘で、後ろは足でえぐる感じだったからまあ・・うん、入ったと思うよ」

 「入ったって…大の大人だぞ?」

 「うん、肉の感じとか凄かったもん。

  多分ハヤテだったら背中ヒビいれるか折るぐらいはした自信あるね!」

だいじょうぶかよ、それで。

小さく言えばスバルは笑った。

 「大丈夫だと思うよ、防具入れてたし、妙に手応えが堅かったんだよね。

  あたしの肘とかの方がいたかったかも」

 「あ!そういえばお前大丈夫なのかよ、腹。

  矛の背で一発うけたじゃん、すごいの。

  みるからに防具とかつけてないし」

あぁ…思い出したようにスバルは言った。

ゆっくりと上着をめくる。

恥じらいの無いその行為にハヤテが焦った。

 「お前、んなためらいもなくめくんなよ、コノエでもんなことしねぇよ」

 「だれそれ」

 「妹だよ。

  ってうわ…青くなってんぞ…わー…」

触れればすぐに叫び出しそうなくらい深く青い痣は左腹部を大きく覆っていた。

 「あとでうちも病院行っておこうかな。

  まあ多分1日くらいで治ると思うんだけど」

脅威の治癒能力を思いだし、少しハヤテは安堵した。

しかし病院の前に城下町にでようとしていたことをしるとハヤテは急いでスバルを引きずって病院へと歩き出した。



外に出ると雲は無く、明るい日差しがまぶしかった

少し目を閉じればまぶたは暖かい陽がきもちよく

吹く風が気持ち良かった



そんな中闘技場から少年一人

後ろに少女引きずって

午後の喧騒が道に響いた





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かけたー!!

なんだかんだいってまた1ヶ月たってしまいました。

この間の話から。

でもな〜1年ちょっとで25話か。

遅いんだろうか、これ。

夏休みなどの10話チャレンジが良い感じに聴いているみたいです。

またやろうかなぁ…

春休み中に3話とか、進められたらやってみたいです。

…また首しめてるネ☆









(2003/03/15....haruco)