24 闘技場



翌日到着した観砂の城。

手続きをし、王と話をするとすぐに王は決闘に興味を抱いた。

「面白いではないか」

観砂の王は初老の男で頭に白いものが混じるものの瞳は強く、体つきもしっかりしていた。

「陣の事は明日までに少し調べさせるとしよう。

 して、その決闘とやらは我が國の戦闘部員と掌空の国司とでやるわけだ、なるほど、おもしろい。

 しかしまあこんな小さな娘と大の男とでは勝負になるのかな?」

少しばかり首を傾げ王はハヤテに尋ねてきた。

ハヤテは苦笑いをすると「仮にも国司ですので」と小さく言った。



そしてせっかちな王が城下にある闘技場を貸し与えたのはその日の昼のことだった。

急な予定になったのは観戦を希望した王の暇が午後にたまたまあったためではあったが、

二人は既にその日のうちに戦うつもりだったらしく、闘技場につくと早速念入りに体操をしていた。

「うわ」

そんな中、客席で一人口をあけていたのがハヤテだった。

考えてみれば日ごろ雲の上とも言える王の横に立ちながらそんな阿呆な顔をしたのはかなり間抜けだったが、

ハヤテはひたすら会場を見渡し、目を丸くしていた。

そこは城下で一番小さく、一番美しい闘技場だった。

小さいといっても三軒ほど家がたつくらいの広さはあった。

しかしなによりも目を引くのはその装飾。

天井は高く、夜空の絵がかかれており、美しくならんだ小さな窓がついていた。

壁には透明なランプがいくつも並べられており、小さく施された壁画が光で揺れた。

そして客席は闘技場を囲うようにして設置されており、白い鉱物で削られた椅子が並んでいた。

ハヤテがいるのはその客席の中でも一番高いところにある特等席で、闘技場が一番良く見える場所だった。

そういえば、ハヤテは思う。

そういえば自分がスバルの場所に立つことだって可能だったはずだった。

実力を測るには確かに兆度いい機会だったはずだ。

そこまで思ってかぶりをふる。

 こんなのに首を突っ込むほど 馬鹿じゃない。





スバルは先日フエに綺麗にしてもらったばかりの旅装束を脱ぐと丁寧にたたんでからマントと一緒に客席に置いた。

腰のバッグも外し、動きやすい格好になったことを確認した。

こういう遊びは、身軽なほうがいい。

それから慌てて色陣の糸を客席においた。

「それでは・・」

王の声が会場に響く。

「準備はよろしいか」

二人はうなずくとゆっくりと闘技場へあがる。

白い石で一段高くなったそこは規則正しく石がならんでおり、すこしばかり目にいたかった。

「おい」

ヒイラギが呼びかける。

「お前、何か武器を持て」

そういうヒイラギの手には矛。

スバルは眉をしかめた。

「なんで?

 いいよ、このほうがやりやすいし。」

「俺が矛を使うのにお前が丸腰では気分が悪い。

 どうせ色陣も使わぬ気なのだろう。

 ならば武器使用ぐらいしてくれないか」

決して突きはしないから。

ヒイラギは笑いながら言った。

それでも不服なスバルはしばらく面倒くさそうに黙っていたが、すぐにきびすを返し、客席に置いた鞄から黒い武器をとりだした。

「くないでも良いでしょう?

 これぐらいしか手ごろな小型武器もってないんだから」

口を尖らせたスバルにヒイラギはゆっくりとうなずいた。

そして静かな間。

王がそれではと小さく言って右手を上げる。



「はじめ!」



その声の発せられた一瞬。

ヒイラギは一気にスバルへと跳躍した。

矛を低く構え相手を見据えたまま。

 ガツッ

しかし響いたのは削れるようなおと。

スバルは軽々と一撃を避けて見せるとくないを構えるとヒイラギへとふりおろす。

ヒイラギはそれを見透かしていたかのように軽いステップでよけると

少し間を置いて再び構えた。



動きの軽いスバルの動きは矛に空を凪がせ

冷静なヒイラギの動きは確実にスバルを追い詰めた



「っはぁ・・」

小さく、荒くもれる息。

顔を上げて汗をぬぐうと、同じく疲れた様子のスバル。

お互いに大したキズは負っておらず、せいぜい小さな切り傷が少々であった。

警戒しつつ息を落ち着かせゆっくりと前を見る。

低く構え、息を殺す。

タンッ

闘技場に響いたのは軽く、力強い足音。

正面から矛をまっすぐ構え走り来るヒイラギにスバルは構えた。

最後の踏みこみと共に矛を振るう。

沈みこむ形でそれを避けるとスバルはヒュッと口をならしくないを上にむけ、そのまま立ち上がった。

構えたくないは少しも手応えを感じることなく空を凪ぎ、急ぎ避けたヒイラギはそのまま矛の底の部分を流すように戻す。

 衝撃

立ちあがりざま左腹部に食い込んだ矛の底は力こそ大して入っていぬものの深く

スバル小さく咳き込んだ。

よろめきながら大きく一歩下がる。

しかしヒイラギは逃がすこともなく追いかけさらに矛を振るった。

避ける、避ける、避ける。

腹部を右手で押さえ、くないを弱く握りながら。

懸命に避ける合間にも、一撃、また一撃とヒイラギの矛はあたっていた。



「あれは相当まずい」

誰にも聞こえないような小さな声で、ハヤテは言った。

どう見ても歩がわるい。

矛の一撃が決まった瞬間から必死に逃げるも矛は振るわれ息を整える間すらない。

追い詰められる焦りにより判断は鈍り

腹部の痛みにより動き回ることも困難なはずだ

決して降参するような事は無いだろうから、きっと倒れるまでつづくだろう。

次の一撃で、次の一撃で。

ひたすら見る痛みに耐えながら

心に湧く焦りに、不安に揺られながら

なかなかしっかりと焦点を合わせない瞳は下をみつめた。



長い攻めで腕は重くなり、息が上がったせいで軽いめまいすら起こりそうだった。

たった一人の娘を倒れさせるだけなのに、これがなかなかしぶとく

決め手となったであろう一撃を放った後も上手いこと逃げられていた。

避けられる合間に決まる一撃すらも浅く、どれも上手く決まらない。

考えてみれば突かないなどと言うべきではなかった。

静かに思う。

迷いはあろうとも的確な場所を突けばもう少し速く試合はすんだだろうに。

時に凪ぎ、時にあたる矛がもどかしい。

自分の振るいが甘いのか、相手の逃げが上手いのか。

あと一撃で倒れるだろう、何度思っても倒れない。

激しい攻めにはいってから初めてヒイラギは一歩引き、息を落ち着かせた。

次の一撃で決めると決め、再び睨む。

合う視線。

藤色に透ける瞳の中に光る刃。

見たことの無いその必死さに、その強さに

一瞬ヒイラギは息を呑んだ。

「らぁっ!」



 その瞬間



スバルは思いきり腕を振り、くないを投げつけた。

「っ・・」

慌てて避ける。

視線がずれる。

音もなく走り来る。

 ダンッ

一瞬の暗転。

くないを避けた瞬間に迫り、強い蹴りをいれたスバルはそのまま姿勢を低くし

瞬く間によろめいたヒイラギの背に回りこむと背に一気に足を振るった。

 ドッ

客席に響くほどの強い音。

倒れる体。

揺らぐ視線。



「そこまで!」





焦ったように慌てて声をかける王。

まわりから音が消え

一瞬あたりが暗くなった。







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自分に戦闘シーンはかけないのかとひたすら思いました。

難しい…、自分にしか浮かばない情景がもどかしい。

どうしても飽きっぽい文章になってしまうのをどうにかしたいです。

う〜ん?

とにかくもう矛で突く以外の使い方なんて知らないのにヒイラギに持たせちゃったものだから困ったものです。

大体女の一撃がそんなに聞くんでしょうか?

背中はでも痛そうだなァ…よく漫画とかにでてくる「かはっ」て感じで。(何)

なにはともあれ空旅。

次回は戦闘シーンかかずに済みそうです。

折角の五体満足。

大切にしなくちゃ…ね!(全くです)









(2003/02/21....haruco)