23 なりゆきまかせ



村を出たのが夕方。

陽はすでに沈み、三人は焚き火を中心に座り、乾燥肉を火であぶっていた。

だいたい非常識にもほどがある。

夜に道伝いでもないのに森で野宿をするなど。

ヒイラギは思いつつも、あまりに落ち着いた二人の様子に何もいえずにいた。

「すごいね、オオトリまで貸してくれるなんて。

 さすが戦闘部!支部とはいえすごいものだねぇ」

城下まで歩いて二日というところだろうか。

それならと同僚が急な任務にも関わらずオオトリを手配してくれたのだった。

今は3匹とも一列になって座っており、草を食んでいた。

「ユミレオ」

小さく呼ぶ。

その声に反応してユミレオはぴくんと耳をはねあげた。

「ごはんだよ。

 ごめんね、乾燥肉で。

 城下に行ったらいいもの食べさせてげられるといいんだけどなぁ…」

呟くスバル。

それを聞く様子もなく、ユミレオは差し出された数枚の乾燥肉を食べる。

昨日までの新鮮な生肉等とうってかわって簡素な食事なわけだが

さして気にした様子もなく、人から与えられたものを至極当然にたべていた。



夜、温暖な気候のためか一人1枚の毛布で事足りる気温。

横になりながら一人ヒイラギはおきていた。

残りの二人、さらには四匹までもが完全に寝てしまったらしく、あたりは完全に静まり返り、小さな寝息だけが聞こえていた。

魔獣避けの香の匂いが鼻をつく。

久しぶりに地面の上に横になったこともあり、ヒイラギはその感触になれずにいた。

どうしてこうなったのだろうか。

観砂で戦闘部の仕事をやりはじめて二年になるだろうか。

最近はやっと仕事も一通り覚え、地形もだいたい把握し、天候も少し読めるようになったところだ。

とはいえまだまだ覚えることも多く、勘というものに関してはまだまだ磨かねばならなかった。

だというのになぜ、あんなことをいったのだろう。



おいかけてやっても いい



自分の口から出たとは信じられない言葉。

何を思っていったのかなどは全く見当がつかなかった。

いや、そうだろうか。

ゆっくりと瞳をつぶればすぐそこに、旅をする自分が浮かぶ。

数年前、友人とした旅のように、新鮮で、大変で、嬉しい出来事が起こるのだろうか。

あたりまえのように職に就き、あたりまえのように日々過ごし

ふと自分の前にさしだされた選択肢にこうも簡単に揺らぐとは

一瞬 何をどうすればいいのかわからなくなった。



「ヒィ?」

小さな声。

ゆっくりと瞳を開けると向かいあう形になって寝ていたはずのスバルの瞳がパッチリと開いていた。

「おきたのか?」

「いや…ずっと起きてた。

 なんだか考え事でもしてた?」

てっきり寝ていたものだと思ったのに。

こちらのしていることまでバレていて、ヒイラギは軽く笑った。

「少し。

 お前こそ、なんでおきているんだ。

 さっさと寝ないと、明日に響くぞ」

「逃げるなら、逃げても良いよ」

数秒の間。

スバルは軽く笑っていた。

ヒイラギは理解したように眉をよせる。

「勝つとか負けるとかおいておいて

 今のお仕事好きそうだし、旅は今約束するものでもないし

 だいいちうちらと旅しなくちゃいけないなんて決めるものでもないよね、本来。

 もし少しでも迷いがあるなら、別に帰ってもいい」

「…ふむ」

どうだろうか。

願ってもなく相手から選択肢が提供されたのだ。

ヒイラギは数秒考えるように目を閉じた。

答えなどでない。

「っていうかね、ヒィがあんな事いうなんて思わなかったんだもの」

「あんな事?」

「勝てたらいいよってやつ。

 やっぱりお茶目だね。

 押し黙った面倒くさがりやかと思ったら以外に好戦的だもの」

「自分で動かなければ…話が進まないからな」

第一勝負など最初から簡単なものにしようと考えていたのだ。

戦いがいやならばじゃんけんとか、トランプとか、賭け事とか。

戦うことになったとしても負ける自信はなかったし

二人の見のこなしはどうみてもリラックスしすぎだった。

「あのほうが、早く話がつく」

「ああ、じゃんけんとかで済ますつもりだったんだね」

図星。

「でもね、願ってもないことだよ。

 ハヤテが否定しないし、問題ないと思うんだよね。

 ヒィと一緒に旅するの。

 面白そう。

 ヒィはどうよ、うちらとって限定しないで…旅をすることに関して」

また、考える。

「そうだな…面白いだろうな。

 今の仕事に満足も不満も抱いていないし、そんなレベルではないと思うし。

 結論をつけるのには早すぎる時期だからやめるとも続けるとも決めがたい。

 やりがいはあるし、新鮮さもある。

 ただ…旅には尽きない魅力があるように思えるかな。

 理想というか探求というか…何かを見つけたいという一心のような気がする。

 終わりなど見ずに、前も後ろも見ずにただがむしゃらに対峙したいと考えるさ。

 観光がてらにね」

目の前に口を大きくあけたスバル。

数秒経てば表情はもとに戻り、にっこりと満面の笑みへと変わった。

「じゃあ機会があれば旅立つんだね」

そういうことに、なるのだろうか。

「仕事もやろう、旅もやろうって感じだけど

 やっぱ無理あるしね…

 やっぱりヒイラギが自分で動くんだ」

裏が読めない。

スバルは眉を寄せ、口のはしに笑みを浮かべた。

睨み、見上げる。

「戦ってみれば決まるね。

 …負ける気はないしね」

その視線の裏にある狂暴さ。

一瞬ヒイラギは悟るとおかえしとばかりに睨んでやった。



「こちらこそ 負ける気などないさ」





夜はふけ、静けさがあたりにひろがる。

ヒイラギは小さく息をついた。

なるように、なるのだろう。

戦って勝てば今のまま、やることがある。

万が一負けてもやることがある。

なにもすぐに何かが動くということではないのだから。

今はまだ

このときばかりはどうか なりゆきまかせで







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いや〜ん。

作者のみならずなんてなりゆきまかせな人達!!

こんなんじゃダメです。真似してはいけません。

っていうかね、やっと得た職を手放すようなことは…ねぇ?

とはいいつつヒィさん。

負けたときは仕事をきちんと続け、長期の諸國訪問任務につこうと考えていますよ…絶対!!

どうなるんでしょう。

勝っても負けても

嬉しさ浮かび

勝っても負けても

寂しさのこる



ヒィさん以外にいいかげん。

若さゆえ…?









(2002/12/24....haruco)