20 モーフの街



少しだけ、夢を見た。

それはすこしばかり懐かしい、涼しげな木々の中、薄闇に浮かぶ景色で。

今までも何回か夢見た景色。

涼しく頬を撫でる風のイメージがあって、自分を呼ぶ声がする。

ふりかえれどもその輪郭はひどくおぼろげで儚い。

揺れる髪、ささやく声、不思議な色

ゆっくりと手が伸ばされ自分に触れるかという時

別の手が引き返させた







「おきろ」

強く響く声、肩に触れる大きな掌。

「おい…おきろ」

何度めかの呼びかけ、ゆっくりとスバルは目をあけた。

「あ?」

不機嫌そうに声を漏らし、ゆっくりと視界を認めていく。

数回瞬きした後、目を合わせれば、そこにはヒイラギ。

マントを外し、マスクを外し、えらく軽装でいて加えて結わえていた髪を下ろしていたが為に

一瞬スバルは向かいの男が誰だか分からなかった。

「起きろ、といったんだが?

 朝飯の時間だぞ」

「あ・・・はい!」

慌てて返事を返し部屋から立ち去るヒイラギを認めてからいそいそと着替える。

白い部屋、白い服、衛生的な中所々に在る切り花が揺れる病室で、ひとりスバルはいた。

大して大きくも無い病室で過ごすこと三日。

もちろん毎日ハヤテとヒイラギ、さらにはなぜか仲良くなった隣の部屋の男の子までもが部屋を訪れたが

元来、落ち着くことがなく、じっとしていることの苦手なスバルは暇をもてあましていた。

ヒイラギに借りた本はすぐに読んでしまったし、遊び相手が帰ってしまってはその後の半日以上、暇でしょうがない。

日記や地図以外、何かをかこうという気も起きなかったし、楽器をやるにも自分には不釣り合いな小さな笛があるのみで

しかもお粗末なものでしかなかったが為に、とても弾く気にはなれなかった。

しかし今日、やっと退院を許可されこの病室ともおさらばできるのだ。

もちろんお世話になったのだし、少し寂しい気もするが、休むよりも動いている方が好きだった。

今日はここで食べる最後の食事。

食べおわった後に、料理長のおじさんにきちんとお別れを告げよう。

雑に手櫛で髪をとかすと、スバルはベッドからぴょんととびおりた。



「残念だよ。

 スバルちゃんがいなくなっちゃうなんて」

やせ型の料理長は少し伸びた髭を手で遊びながら言った。

入院患者を含めた客の足は落ち着き、調理場が空いたところで

料理長はいつものようにスバル達のテーブルへと向かったのだった。

「ふふっ、あたしもおじさんの料理食べれないなんて残念。

 病院の食事なんてもっと地味でまずいと思ってた。」

「ありがとう。

 まあ、おいしくなきゃ食べる気なんてしないだろう?

 やっぱり制限はメニューごとにある定度するけど・・・地味よりは少しでも華やかな色合いの方がいいだろうからさ。

 ヒイラギさんも、そっちのお兄さんも、スバルちゃんのお友達はよく食べてくれるからうれしいよ」

料理長はしわをよせてにっこりと笑う。

本当に、この三人はよく食べる。

最初はただおかしくて、不思議で。

ただ食べる姿を見ていただけなのに、気付けばもうこんなに親しくなってしまってる。

料理長は心底寂しそうに笑った。

「この街は、いつ発つんだい?」

その問いに一瞬の間。

何も考えていなかった二人はしばらく互いを見合わせた。

「・・・明日・・・か、あさってかな」

「どっちだよ」

小さく笑う。

「じゃあ明後日。

 少しここでそろえたいものもあるし。

 なんせ服が血でそまっちゃったからね、旅装束だからあんまり奇麗な必要はないんだけど・・・

 ここで洗ってもらっただけじゃ落ちなくて・・・道具屋さんにでも行って落としてもらうよ」

「じゃあ・・・発つ前にきちんとここによっておくれよ?」

お別れぐらい、いわせておくれ。

小さくいう料理長に、スバルはもちろん、と笑った。





病院に勤めていた女性に服をかり、ハヤテとヒイラギとともにスバルは街へと繰り出した。

久しぶりに浴びる太陽の日差しは思ったよりも暑く、その白い肌を焼いた。

「後で赤くなってひりひりしそう・・・」

「お前白すぎだからそんぐらいでちょうど良いんじゃないの?」

目を細めて言ってきたハヤテを無視し、軽快に足は進む。

右を見ればレストラン、左を見れば食材店。

朝が終わり、動き出した街には人が少しばかり見え始めていた。

砂漠の中にあるにもかかわらずその風景はとても活発で

いつもモーフに立ち寄らず歓砂に入っていたことをもったいなく思った。

「二人ともこの二日?まあ大体三日か・・・何してたの?」

小首をかしげ、丸い瞳を輝かせて聞く。

ハヤテはヒイラギの方を見た。

促されるような空気に小さくため息をつくとヒイラギは口を開いた。

「そうだな・・・まあ大体ハヤテに街を案内しただけかな。

 あとは・・・なんだ、あの熊・・・」

「ユミレオ」

「そう…ユミレオ。

 さすがにあいつを病院裏に繋いでおくのはまずかったから宿につれてい・・・」

「病院裏に繋いでおいたの!?」

ヒイラギの言葉を遮るように道に轟くスバルの声。

呆れとも、怒りともつかない表情でスバルはにらんだ。

「何考えてるのさ、もうすこしかんがえなよ」

怒ったようにスバルはいう。

「だから言ったじゃないか、街につれてはいると混乱させちまうのに

 一緒に連れて行けないって・・・

 それでもお前らが勝手にいくから・・・ああするしかなかったんだよ。

 いいじゃねぇか、調度人も少なかったし・・・」

そうはいってもスバルは納得する風を見せない。

ふとヒイラギは道の端へと足を向け、ゆっくりと店を見つめた。

少しだけ、距離をおいて。

「でもやっぱり・・・もう少し考えるべきだよ・・・

 なにさ、繋いでおいたって・・・首に輪っかつけるなんてかわいそう!」

「そこなのかよ」

小さくもれるハヤテの声。

てっきりユミレオを街に連れ込み人を混乱させたのを怒っているのかと思ったのに。

何人か近くを歩きすぎて気絶したりさせてしまったことが悟られたのだと思ったのに。

「いいじゃんか、繋いでおくくらい。

 残念ながら首輪はしてねぇよ。もってねぇもん。

 ちょっと粗紐と木をつないだだけだよ」

さらりというハヤテ。

やっぱりひどいと小さくスバルが呟やく。

納得いかないようにぶつぶつを言い合いをすること数分

スバルの頭へと手が降ってきた。

「ほら、もういいだろう。

 今繋いでいるわけではないのだし、ハヤテも急いでいたんだ」

パフパフ

リズミカルに頭を叩く。

優しく触れる大きな手に一瞬スバルは驚いて慌てて後ろを振り向いた。

「うわっ」

振り向いたとたん何かにぶつかりそうになって慌てて固まる。

鼻先に差し出されたそれは果実を中心に棒にからめた飴細工で、きらきらと日光に触れ輝いた。

甘い、甘い香り。

「食べるだろう?」

小さく手を動かして差し出されたそれをおそるおそるスバルはうけとる。

「ほら」

そういってハヤテにも一つ。

言い合いを初めてから姿が見てないと思ったら。

二人が同じ事を思い、ゆっくりとヒイラギを見てみると

ヒイラギは笑いながら飴をくわえた。





「ここだよ」

ヒイラギに案内されたどり着いたのは小さな道具屋。

街の外れにあるその道具屋は道中見てきた中でも特に古く、小さかった。

舐めはじめたばかりの飴をくわえ、こもった声でへんじをする。

「なんか・・・アンティークな感じだね」

無理矢理絞り出した微妙な誉め言葉。

ヒイラギお勧めのお店なため下手に文句は言えなかった。

「まあ今にも潰れそうなボロい店だというのは否定しないが・・・」

見透かされた心中。

「良い仕事をする。

 陣をあつかう老人でな・・・少しはお前達の探す陣の事を知っているのではないかと思って。

 古臭い道具や旅道具ばかり扱うが、かなり信用できる。

 必要な知識も教えてくれるしな・・最近の店の様な多売はしないし、新商品も少ないが・・・

 本当に、安心できる店だ」

らしくもなく、穏やかにヒイラギは笑う。

付き合いが短いとはいえ二人はそんなヒイラギの笑顔を見たことがなかったため小さく驚く。

「そう…なんだ」

かろうじて絞り出した返事。

少し小さくなった飴をくわえ直し、スバルは店の戸に手をかけた。







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な・・・なんなんだこの話し!!

久しぶりに描いたと思ったらこれですよ、奥さん!!(何)

なんだろうなぁ・・・えらくヒイラギが子供っぽいです。

意外に甘党ということで・・・スバル復活!

モーフの街で出会う老人とは!

地味なハヤテに台詞はあるのか!!

ユミレオはでてくるのだろうか!!!

何も決っていないので結構てんてこまいですが・・がんばります!



が ん ば れ 自 分 ! !







(2002/12/07....haruco)