再会



一歩、一歩と遅い足を引きずりながら

せかせど速まらぬ足に苛立ちを感じながら

やっと砂の合間から垣間見た町の景色は明るかった。

ふと、ハヤテは歩みをとめる。

もう数十歩も歩けば街の門にたどり着くというとき。

「…おまえ」

小さくつぶやき、睨み見た先にあったのは一つの獣の姿であった。

マスカの森でハヤテが出会い、小さく呟き立ち去った謎の獣。

少し光の出始めた、薄く青い世界の中でみてみるとその姿は実に輝いて見えた。

獣は少々大きく、その体の毛は白く、かすかに光をちらす銀。

大きい両の瞳の色は薄紫。

しっかりした体から地に向かいしっかりと立つその四足は細く、強く見えた。

一見すれば狼のような、獅子のような姿。

獣は小さくうなった。

「…なんだってこんなところに…」

言うと同時に神経を尖らせる。

ユミレオは静かにたたずみ、見つめるのみ。

獣はすこしも緊張した様子はなく、攻撃の意思はないと見えた。

ヒュ〜

獣の口から軽やかな音がでる。

前に口笛と感じたそれは今回はあまりにも空気音に聞こえ、弱かった。

一瞬ハヤテは目を細める。

そして目をゆっくりと瞑り、開くとまた歩き出した。

サリ…

小さな音を立てて砂が流れる。

「もうこんなことがあってたまるかよ」

歩みながら呟く。

…ウゥ…

音をたてて獣はうなる。

「え?」

意思さえ汲み取れず、ハヤテは急いで振りかえるが

再び振りかえった時

そこに獣はいなかった。



やがて日も十分にあがり、人々はゆっくりと動き出す。

案内されて病室に着くと、スバルはベッドに横にされていた。

静かに寝息を立てながら、ベッドの上で丸くなりながら。

そばを見ればマスクをはずして椅子に腰掛けながら眠るヒイラギ。

やっとたどりついたそこは小さな部屋であったがために

まわりに人はいず、その部屋には小さな寝息があるのみだった。

ベッドの脇にそっと座るとキイと小さな音が鳴る

最初見たときよりも少し色の抜けたその髪が窓からの光にキラキラと揺れた。

「ぅ…」

小さな 声。

タイミングをはかったかのようにスバルは目覚め

ゆっくりとハヤテが視線を向けると眠そうなスバルは一瞬止まってから静かににっこりと笑った。

「おはよう」

「おはようじゃないよ」

間髪入れず言う。

そしてヒイラギに気を使うかのように声を小さくして、ハヤテは続けた。

「起こしたか?」

「ううん」

早い返事。

「・・さっきから結構こまめにおきてた」

短い会話をしながらもスバルはのそのそと起き上がると抱きかかえていた枕をたたき、そばに置く。

足を崩しながらも背筋を伸ばして座った。

着ているのは 白い服

包帯目立つ 白い服

「なに…?包帯?」

「ん。

 毒抜くためにわざわざ毒師さん読んだみたい。

 だからもう大丈夫、たいしていたくもないしね」

いつもどおり

いつもどうり

ヒイラギのおかげだね。小さくスバルは笑った。

ふとハヤテは罪悪感に苛まれる。

顔をゆがめると下を向いていった。

「ごめん」

「もう少ししっかりしてれば良かったんだ」

えっ、とスバルの驚く声が聞こえる。

謝られるとは夢にも思わなかったのだろうか、困ったように眉を寄せた。

「あれぐらいのやつ、一人で倒さなくてはならなかったんだ」

「強くなくちゃいけなかったんだ」

「多くのものに頼りすぎてるんだ」

言葉はどんどん溢れ出す。

あせったように

悲しむように

ともすれば激しく叫びそうだったハヤテをとめたのは

小さなスバルの声だった。

「何をそんなにあせっているの?」

小さく、響く声。

「生きてるよ?

 無事だよ?

 あれはあたしの敵でもあったよ?

 あたしも多くのものに頼らなくてはいけないよ?」

ただ少し傷ついただけだというのに

ハヤテの過失ではないというのに

何をそんなに悲しんでいるのだろう

「怪我をさせたさ」

昔からいつもそう

決して無理ではなかったはずなのに

どうしてやり遂げられないんだろう

ふぅ…

小さくスバルはため息をついた。

しっかりと立ち上がるとハヤテを見下す形になる。

「とても痛かった

 血が流れた

 ヒイラギと喋らなくてはならなかった

 ハヤテを歩かせた

 手間をかけさせた

 傷跡が残ることになりそうだ

 まだ少し痛い

 おなかがすいた!

 疲れた!!!」

あっという間に喋り尽くす。

「なんだよ」

反抗的に睨みあげるハヤテにスバルは満面の笑みを向けた。

いやみたっぷりに、心から楽しそうに。

「これが今のありったけの不満だよ。

 あたしに怪我をさせたと思うなら思えば良いさ

 背負いたきゃ背負えばいいよ

 つよくなりたきゃ勝手になれば良い。

 もしもついでに持つのなら…」



あたしの不満も持てば良い



「上等」

ハヤテは吐き捨てるようにいった。





ヒイラギが目をあけると底には既に二人の姿。

熱心にトランプをしている最中だった。

「ああ、おはよう。

 ヒィ」

子供の頃以来の呼び名が耳にくる。

軽く眉をしかめるとなんとか「やめろ」と呟いた。

「世話かけたな」

悪びれたふうもなく、明るく言ったのはハヤテ。

「少しは悪く思ったらどうだ」

滅多になく笑っていったのは久しぶりで

同時にスバルが笑い出す。



なんだかね 全部持つことになったらしいよ

それで勘弁









..............................................................................................................................

や…やっと出来た!19話!

長かったよう…ここまで。

忘れかけていた獣を出しました。

ヒイラギが少し笑いました。

何故かハヤテが自責の念にやられてます。

持つことにしたらしいです、いろいろと。

自分で書いておきながら完璧他人ごと。

人の気持ちを考えて書きましょうね(にっこり)

背負うというのはつらいことだ

全てを持つというのはつらいことだ

過去を背負うというのはつらいことだ

共にあるというのはつらいことだ

しかし

それら全ては不可欠で

とても大切で 優しいこと



きっとハヤテは大丈夫

だって荷物持ちがいるのだから







(2002/11/05....haruco)