18 ヒイラギ
「スバル!」
何度目かの叫び声を上げた時、謎の生物はすでに事切れたように砂の上へ倒れこんだ。
危険がないことを知ったや否や、ハヤテは連結棒をほうりだし、スバルの元へと走り出した。
スバルが身を預けていたのは大きな鳥で。
ハヤテが街を出るときに國からかりたのと同じ、オオトリだった。
キュル・・
鳥は小さくなくとハヤテを一瞥してから身をかがめスバルを砂の上に降ろす。
そのときに生じる、小さなうめき声。
「・・・っ」
意識はあるようでスバルは小さく身をよじった。
ハヤテはゆっくりとその顔を覗いた。
「大丈夫・・・か?」
「ああ、ハヤテ。」
うっすらとまぶたが開く。
「ちょっと油断したね・・・しくった。
ああでも、大丈夫。
強くかまれたわけでもないし、外出血も大して見当たらないしね」
スバルはそういって笑いながら身を起こし座ったままの鳥に背を預けた。
うっすらとにじむわき腹と足のあたりはスバルの言うように命に関わる出血ではないようで
ハヤテは胸をなでおろす。
サリ・・・
小さく音を立てて謎の生物を倒した影が近づいてくる。
ハヤテは顔を上げ目を細めて逆光で見えにくい姿を捉えようとする。
ゆっくりと輪郭をあらわにしてくる影は背の高い男であった。
大きなマントに身を包んだ男で、マントから出た腕は細く傷が目立つ。
フードにマスクでかすかに除く髪の毛は茶色かった。
「?」
正体のわからぬ影に少し身構えながらにらむ。
しかしスバルは危険性を考える前ににっこりと笑った。
「ああ…ありがとうございました。
拾っていただいて」
スバルはあわてて立ち上がる。
右足を緩くまげ、左に重心を置く。
「おいおい、立って大丈夫なのかよ」
「大丈夫」
「・・・嘘は言わないことだ」
ゆっくりと、告げる声。
マスクのせいか少しくぐもって聞こえる男の声はひどく深く、静かだった。
「特に、こういう時は」
一瞬身を凍らせるスバル。
「いいから座れ」
男はそっけない口調でいうとスバルを無理に地に座らせた。
そして血のにじむわき腹と足をよく見ると敵に跳ねられた時についた紫の染みを見つけた。
そっと撫でる。
「った!」
顔をあからさまにしかめるスバル。
体をくの字にまげ男の手を払う。
「おい・・!」
「大丈夫だってば」
「大丈夫ではないといっただろう」
男はハヤテを見た。
「君は、この娘の連れか?」
「ああ」
ゆっくりと、返事をした。
「先ほどの敵は砂漠でもあまり見ないアンツイルという虫型の獣だ。
私はこの砂漠を取り仕切る区域所のものでここいらをいつも見まわっているのだが…
アンツイルは牙に毒を持っている。それは大変な猛毒でかまれたとたん死ぬが
牙以外にも皮膚全体に毒を持っていて激しい痛みを持たせると同時にそこを腐らせる。
まあ腐り落ちる前に大抵は刷り込まれる毒によって発熱し・・・死に至るが」
「っな・・」
驚くハヤテ。
スバルは男をにらむといった。
男はそんなスバルにかまいもせずに塗り薬を出すと丁寧に足に塗ってやっていた。
「だからどうしろというの?
私たちは歩きなんだし…この状態じゃそう遠くにいけないさ」
「このオオトリにのせて私がこの先の街に連れて行こう、そこは山のふもとにある。
オオトリの足で行けば…多分に三時間といったところであろう」
ハヤテは迷った。
おそらくこの男はスバルをそこまで連れて行ってくれるだろう。
ただ問題なのはこの男が本当に頼れるものかということ。
ウチ砂漠に入る前に看板に「砂賊注意」とかいたものがあったのをハヤテは思い出した。
しかし選択肢はない。
「スバルを、頼む…・その街までつれていってくれないか?」
「ハヤテ!別行動だなんて…危ないよ
第一ハヤテどうすんのさ」
「そんな事いってる場合じゃねえだろう!?
足腐って落ちちまったら旅立って出来ねえんだよ」
「だからって相棒をこんな砂賊とも就かないつかない男にあずける?普通!」
「うるせえ!だまってろ!」
ハヤテはスバルの頭をくしゃくしゃにすると男の方を向いた。
「安心しろ、砂賊じゃない。
ほら」
男は腕をめくった。そこには焼印。
各国共通の王宮戦闘部のものだった
。
「戦闘部といっても地方部署どまりの若造だけれど。
このままほうっては置けない。
俺がこの娘を安心な病院に連れて行こう。
オオトリは二人で多分精一杯だろう・・・・歩いて、これるか?」
「・・・はい」
小さく息を呑んでハヤテはうなずく。
男は一息つくとハヤテの右の方向を指差した。
「このまま南にまっすぐ進め。
休まずに行ければ明日の朝にはつくだろう」
男は嫌がるスバルを鳥に乗せた。
スバルは足をかばいつつ必死の抵抗を見せたがそれも無駄で
つづいて乗ってくる男によっておさえつけられた。
「その街の名はモーフ。
そこ一番の病院で俺の名を言えばわかるだろう。
そう言えば…名は?」
「俺はハヤテ、そっちはスバル。
まあ休まずに頑張ってみます。
なんだかあったばっかで申し訳ないんですが・・・よろしくおねがいします」
ハヤテは笑いながら言うと頭を下げた。
男はハヤテに小さくうなずくと鳥の頭をさする。
スバルが落ちないか確認するとすぐに手綱を持った。
「名前を行ってなかったな・・・ヒイラギという。
病院で、そういってくれ。」
辛いだろうが、頑張って。
表情を変えずに優しく言うと
南へ向かって走り出した。
ため息をつく。
大人しく横に並んであるくユミレオに二、三語りかけながら。
あいつ今ごろ一人でいかせたこと怒ってんのかねえ?
でも走ってついてくわけにいかねぇし
死ななきゃいいけど
ヒイラギが通ってくれて助かった、王宮戦闘部ってのは強いねえ
いそいで、おいつかな
南を見る。
炎天下の中揺らぐ砂丘はやがて赤く染まりだした。
気温が下がっても歩き続ける。
休んでは歩き、だまりこくる。
星がちらつき見が凍りそうになっても歩く。
何度目かのため息をついて、ハヤテは一人つぶやいた。
「弱いなあ」
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なんだか死にそうです。スバル。
書いていて自分でもビックリしているんですが・・・どうなるんでしょうか・・・ねぇ?
生き物って言うのはすごい簡単に死ねてなかなか死ねないものだとかんじます。
ましては旅なんかしていたらなおさら。
のんびりでもきっと危険なんだ。
後悔の念と痛みに耐えろ。
霧晴れるそのときまで。
(2002/09/20....haruco)