BETWEEN 18 and 19 ワガママスバル



「さっきから何をふくれている」

「だって」

オオトリの背にゆられながらスバルは小さく返事をした。

「寝ていたらどうだ、少しは気が紛れるだろう?」

つとめて優しくヒイラギは言う。

走り出してから一時間と半。

やっと中間地点まで来たといったところであった。

ヒイラギは道中何度もスバルを気遣う言葉をかけたが

スバルはというと頬をふくらませ小さく言葉を発するだけだった。

もちろん傷はオオトリが一歩進むごとに激しく痛むし眉間にしわが寄らないわけではない。

しかしそうやすやすと意識を手放してなるものかと意志をさらに強くした。

「死にたくないか?」

ふと、静かにヒイラギは言った。

スバルはさらりと髪を流すように首を回すと表情を変えることなく言った。

「まあね」

無機質な返事にと惑うこともなく、ヒイラギは前を見つめた。

「お前は・・死なないのだろう。

 そういうことになっているようだ」

「何それ」

「天の采配?」

采配という言葉にスバルはあからさまに嫌そうな顔をした。

「それはなんですか?あたしは犬じゃないんですけど。

 だいたい天の意志通りにことが進むのであればあたし達が考える意味などないじゃない」

あまりに淡々と喋るのでヒイラギは口の端を歪めた。

そして手綱を右手に収めた。

「面白いことをいう。

 大丈夫だ、きっと生きれる。」

ヒイラギはそこで大きく息を吸った

「しかし・・・

 それほど楽な怪我ではないのはおまえがよく分かっているだろう?

 よく痛みをこらえてはいるがそんな神経を張り詰めていては気疲れするぞ

 ねていたらどうだ」

スバルはというと黙ったままで口を尖らせている。

ヒイラギはちらりとスバルを見た。

しばらくその髪の毛に見入る。

「変わっているな」

沈黙。

しかしスバルは気分を害した様子もなく「まあね」と小さく言う。

静かな時が流れた後にヒイラギは息をつくと笑った。

「眠らないなら聞きたいことがある」







それはハヤテについてで。

ひどく困った。

しかしヒイラギにその表情は悟らせない。悟らせてはいけない。

「ハヤテは、ね・・・

 連結棒を使って戦うんだよ」

そう、あの赤い連結棒。

携帯には便利だけれど力の入れ様によってはすぐに折れるしなによりコツが必要なやつ。

なよっちいハヤテには不向きな武器におもえる。

「剣とか、銃とか、まああんまりスマートじゃないけどもっと良い武器いっぱいあるのにね。

 でもまあハヤテらしいといえばハヤテらしいよ」

そう、絶対に中途半端な武器を持たない気がする。

自分の実力で次第できちんと戦える、ハヤテのための武器な気がする。

あえていうなら…殺す時はきちんと自分で殺す武器。

生かすも殺すも、自分次第な武器。

「空の國の者なのか?」

「うん、そうだよ。

 わかりやすいアズマガオだしね、愛敬のあるだらけた顔だと思うよ。

 あたしは好きだけど、ヒイラギはどう思うよ」

「まあ、童顔ではあるな。

 あの背の高さでなら女でもいけそうな気はするが」

ああ、そうだね。

にっこりと笑ってやる。

その後もあたしはずいぶんしゃべったもので、ヒイラギはやっと安心したような顔になる。





ああ あたしはこんなにも困らせるよ

ああ あたしはこんなにも勝手だよ





「っくそ!」

杖替わりにしていた連結棒を腹立たしげに地に付きたてる。

砂はそれを受け止めず、あまり深くまでもぐらせない。

静かにユミレオが泣いた。

「んな声だすなよ」

そういってハヤテはちいさく口を動かした。

それを真似るように声にならない音を出すユミレオ。

ハヤテは情けなく笑った。

歩く。

歩く。

歩く。

吐く息は白く、手は冷えグローブをしているにもかかわらず冷たい。

時折ズボン越しにつたわるマントの冷たさは、さらに歩みを鈍くさせた。

ため息。

「あとどんくらいあんだろうなぁ」

泣きそうな声を出すハヤテにユミレオは吠える。



 は や く あ る け



「なんだよ、お前。

 スバルなぁ…いいよなぁ、鳥乗ってんだぜ、あのでっけぇ鳥」



「あのなぁユミレオ、オレ國に妹いるんだけどな、これがまた気の強い妹でな

 ちょっとスバルと似てるかも…いやあんなに訳わかんなくねぇけどな?」



「うわ、さみぃ…

 昼あんだけ暑いのに夜これだけ寒いってどういう事だよなぁ?」



「あれぐらいのやつなら…一人でやれると思ったんだがな」



どれだかおしゃべりが続いたのだろうか。

ユミレオの頭を撫で「休憩」と小さく言うとハヤテはカンテラに灯を点した。

あたたまる手のひら。

寒さに目を閉じながらハヤテはまた一人、寂しくつぶやいた。









コーヒー飲みてぇ









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BETWEENネタ第二段。

基本的に間っぽい、地味な風景で書きたかったものです。

なんだろう、結局国司なんだから自分の身ぐらい自分でまもるものだろうけど

実際手合わせでもスバルが勝っているのだけれど

それでも強さとか関係なしに

傷ついたことに辛くなっているのでしょう。



声が聞こえるというのは辛いでしょう。

何度涙を呑んだでしょう。



それでも歩くんでしょうね。

生きていることが第一歩です。

少なくとも 歩くには生きなければなりません。



きっと

きっと





(2002/09/22....haruco)