16 ユミレオ



「おいで、ユミレオ」

再び、スバルの静かな声が風に乗る。

小熊はそんなスバルの瞳をしばらく見つめていたが小さく首を回すとゆっくりとその背に向かって歩き出した。

「可愛いね」

小さく言って、さらに前へ。

最初は後ろを気にしながら歩いていたようだったがすぐに一緒に横に並んで歩き始めていた。

その歩調は心なしか早い。

「おい!待てよ・・・!」

慌ててハヤテも後を追う。

「待てってば!

 ねえ!

 ねえ待って!待ってスバル!」

走ろうとすれば走ろうとずるほど足は砂で空回りし、なかなか思うように進まない。

しかしそれでもなんとか差を縮めると急いでスバルの肩に手をかけた。

「何」

静かな、というより心なしか殺気すら帯びる声。

「何じゃねぇよ。

 お前何かってに歩き出してんだよ、しかも熊と一緒に」

「だって、ハヤテ言っても聞こうとしないんだもの。

 ならいいよ、この子が自分でついてきたんだよ?

 呼んだら、来た。

 それだけのこと」

だから呼ぶなっつの。

心の中でハヤテは毒づいた。

そして大きなため息一つ。

「なあよく考えろよ。

 そりゃ愛着も湧くような気もする、幼いし人に対してさして警戒心もない。

 危害は加えないかもしれない。でも。でもだよ?

 本当にいいことだと、それだけのことだと思ってないだろ?お前だって」

言い聞かせるように、しっかりという。

スバルは怒ったように眉間にしわを寄せた。

「これからいくつの街に入る?いくつの検問を通す?

 ペットとか、家族とかいったって熊は熊だぞ?

 しかもマスカの母熊みたろ?小さいけど軽く2Mはいくぞ。

 そんなんで旅できねぇよ」

でも・・と小さくスバルは言った。

悲しそうに二人は喋る。

「こいつだって。

 本当なら森で生きなきゃいけないんだ。

 1人でも、きちんと生きるんだ」

響く 声

しばらくうなだれていたスバルだったがゆっくりと顔を上げた。

「お願いが、あるの」

静かに、静かに言う。

自分に言い聞かせるように、静かに、静かに。

「この先に、歓砂がある。

 そこにあたしの先生がいる。

 そこまで。そこまででいいから。

 おねがい・・・」

言ったスバルの言葉には

別れたくないとか、一人は寂しいだとか

そんな言葉以上のものがあって。

ハヤテは小さく息をついた。

どうやっていいきかせようかと

空を仰ぐ

「なんで、そんなにこの小熊に執着する?

 言い聞かせれば、森へ返せるかもしれないよ?

 こいつはお前の弟か?兄ちゃんか?え?違うだろ?」

からかうように、もう言い聞かせる言葉がみつからず吐いた言葉に、スバルは小さくわらった。



「同胞、だよ」

あまりに切なく言うものだから、ハヤテはかける言葉を失った。





「あの、一応いうけど。

 あたし熊じゃないからね?」

「は?」

しかたなく一緒にあるきだした二人と一匹は、軽く会話をしながら岩陰へ急ぐ。

唐突にいった一言に、ハヤテは口を大きく開けた。

「さっきいったでしょ?同胞って」

「ああ、いったね。

 ああ、大丈夫だよ、お前の兄弟だなんて思ってねぇし。

 馬鹿にすんなよ、てめぇ」

眉間にしわを寄せて言うハヤテ。

ああ、そんなにしわばかりよせているとそのうち顔中しわくちゃになっちゃうよ?

いいかけて、スバルはやめた。

なんとなく、しかたなさそうにハヤテが歩調をあわせているのに気付く。

「歩きにくい?」

「・・・・なんで」

まるでわからないという顔をする。

小さくスバルは笑うと歩調を少し早めた。

「おいで、ユミレオ」

後ろを振り向いて、小熊に声をかける。

言ったとたん後ろからペシンと頭をたたかれた。

「いたっ・・・何すんのさ」

「なんだよ、その変な名前」

一瞬とんでもない事をいうものだと頬を思い切り膨らませてからスバルはハヤテをにらむ。

身長差からか、それはなかなか子供らしい仕草に見える。

「あのねぇ、これはとても素敵な名前なんだから!!」

追いついてきた小熊の頭をなでながらスバルは言う。

「ユミレオのユミは小熊を指す。

 レオは獅子」

「こいつ熊だよ?」

めり・・・

言ったハヤテの腹にスバルは肘をいれてだまらせた。

「獅子のように、気高き心を。

 けして呑まれることなき自分を」

そういって、空を見上げる。

すこし強い風が吹いて、ちらりと景色が揺れた。

ハヤテは小さくため息をつくと首を一回まわして小さくわらった。

「おいで、ユミレオ」







呼ばれた声は優しくて

包まれたような安心感

少し前に愛しいものが倒れ

すまないと小さく背をむけて去ったのを

糸を手繰るように追いかけた

どうだろう

しあわせだろうか

今 ただ楽しくて







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さあユミレオだ!!

ずっと昔から出すことは決まっていたのに出すのが遅れてしまいました〜

もう少し砂漠篇は続きます。暑そう・・・

くまって良いですよね、ふかふかでもこもこで。

絶対襲われると思うけど・・・二人は特別ってことで(んなアホな)

なかなか不思議な一団になってきました!

がんばるぞー!!









(2002/08/31....haruco)