15 遭遇
「あぁ〜、いえてぇ・・・」
しんどそうに、ハヤテは息をついた。
「お前、手加減ってもんを知らないの?
普通もう少し優しくやるよ?
間違いなく、本気だっただろ・・・」
小さく愚痴をこぼしつづけるハヤテにスバルはただただ笑顔で謝るだけだった。
怪我はどちらもたいしたことはなく、とはいえ先に進むのもなんとなく億劫で
結局そこで一日を過ごした。
保存食も少し調達できたし、飲み水も用意できた。
水に関しては色陣で出せないこともないのだが『疲れる』というスバルの言葉で却下となった。
そして朝に出発。
日が昇り始めたばかりだというのに気温が高く、2人の足取りは芳しくなかった。
一時間に一回の小休止を3回ほど入れたころにようやく目の前に砂の地が見えてくる。
ウチ砂漠
泰海と歓砂にまたがるようにしてある砂漠で大きさこそたいしたものではないないが
昼夜の激しい温度変化ときつい日差しは旅人を苦しめた。
「っかぁ〜マント着てても日差しが痛いね」
砂漠に足を踏み入れてからというものどうにも上手く進めない。
近くの村で馬でもかえばよかったと舌打ちした。
「軟弱者め。
まあでも・・たしかにしんどいね。
どうにもこうにも前になかなか進まないのは・・・」
二人の息は荒い。
日がもっとも高くなる昼の三時間はさすがに歩き回ると死ぬ恐れがあるのでそれまでになんとか歩いて距離を稼がなくてはならない。
「なぁスバル・・・」
「なあに?」
「この砂漠ってどのくらいで抜けんの?」
苦しそうにいったハヤテにスバルは立ち止まるとしばらく考えた。
昨日地図で確認したもののいまいちわからない。
数秒考えたように下を向いていたスバルは不意に顔を上げた。
「このペースで午前五時間午後四時間あるいていくとすると・・・
二日と・・・半、くらいじゃないかなぁ・・・」
「二日と・・・半ね・・・」
もちろん砂漠としては最小の部類にはいるのであるから、三日もあれば抜けられる。
しかし炎天下の中そんな会話をしていてはかえって気がなえるだけであった。
「ハヤテが・・・っ
いけないんだよ?
距離なんて考えたりしたら疲れるの当たり前じゃない。
ああ、ちゃんと南に向かって歩いてるよね?磁石は・・・良しっと・・・」
のそのそと腰のバックから磁石を取り出すとしばらく見つめて確認した。
そして、ゆっくりと前方の岩山を指す。
「あそこまで行けば、ちょうど昼になって三時間は休憩だから・・・
暑さにやられないように休憩はなるべく涼しいところでとろう?
ほら、がんばって・・・・」
いいかけて。
スバルは急に立ち止まった。
後ろをのそのそと歩いているであろうハヤテをみるとずっと前から気付いていたのだろうか
静かに後方を見つめている。
パチンっ
すばやくベルトのポケットのボタンをはずすと色陣を編む用意をした。
ハヤテはというとすでに連結棒を組み立て終えており、暑いのも忘れ一点をにらんでいた。
「魔獣・・・?」
静かに、息を吐く。
深呼吸をして、にらみを聞かせる。
砂漠には魔獣はもちろん危険な蟲や獣がいる。
数こそ少なく、よく見かけるようなものではないがその分凶暴で、強い毒をもつものが多い。
低く姿勢を構え、一歩足を前に出す。
サリ・・・
ハヤテの見ていた一点の砂が、揺れた。
かすかにおこった風に流れ、影が動く。
「?」
神経を研ぎ澄ませ、その声を聞く。
「ああ・・・・なんだ」
先に武器を下ろしたのはハヤテ。
それをみたスバルは訳がわからないとでもいうように
軽く にらむ
「大丈夫だよ。
しかし・・・まさかこんなところまで追ってくるなんてなぁ・・・」
ゆっくりと紡ぐ言葉は語りかけるようでおぼつかなくて。
いったい何に向かっていっているのかしばらくスバルにはわからなかった。
サリ・・・
再び揺れた影はゆっくりと歩み影から輪郭をあらわす。
「ああ!!」
嬉しそうに、スバルは叫んだ。
まさか、こんなところまでやってくるなんて。
信じられないとでもいうようにスバルは近寄った。
一瞬「危ない」とハヤテはスバルの手を引いたがスバルはそれを軽く振りほどいて駆け寄った。
「すごいね。
お前、どうやって来たの?」
語りかけたのは小熊。
マスカの森で母熊と共に2人の前に姿をあらわしたまだ小さな熊だった。
「おい、かまれんぞ」
面倒くさそうにあごをもちあげていったハヤテにスバルはくすりと笑う。
「そんなことしないって、ハヤテが一番よく分かってるでしょう?」
会う、視線。
「なんだよ」
「だってハヤテ、とても・・・・」
よく聞こえない。
しかしそのいつもと違う優しげな瞳をしていった言葉をもう一度いってもらうなどできなくて
「なんだよ」
軽く、ため息をついていった。
「小熊、ハヤテ好きだもの」
ゆっくりと視線を合わせてから小熊の背中をスバルはなでる。
思ったよりも柔らかい毛が肌にふれ、流れた。
小熊はスバルの目を見たまま襲うでもなく、寄り添うでもなくただなすがままになっている。
しばらくして、再びハヤテは口を開いた。
「追ってきたのか。あれから。
よくもまあこの砂漠の中を・・・普通死ぬとかするぞ・・・?
なあスバル」
「何?」
振り向く。
「どうする?
こんなところで油売ってられないよ?」
ああ・・・悲しそうにスバルは言う。
ため息をついた。
お互いに次にいう言葉がわかったから。
悲しそうな顔と、面倒くさそうな顔。
ゆっくりと、スバルは顔を上げた。
「ねえ」
「駄目」
「っ・・・・」
思ったよりも早い反撃にスバルは戸惑う。
ゆっくりとスバルと小熊の近くに歩み寄るとハヤテは再び一息ついてスバルの頭にポンと手を置いた。
「どうして?
熊なんて連れて旅できないから。
きちんと面倒見るから
そんなこといってもどうにもならないことがあるから。
きっとなんとかなる
ならないことのほうが多い。
お願い
駄目。
それは、駄目」
全てを見越したように、あっという間に1人で会話の行方を喋る。
見透かされたのが相当悔しかったのかスバルは数秒口をパクパクさせる。
なんともいえぬ間があった後に息が漏れた。
「なんだよ・・」
すこしたじろいたような声。
「おねがい。
この子1人だもの。いいじゃない、人数多いほうが楽しいでしょう?」
「人じゃねぇし。
第一1人だからってそんなかまってたんじゃ旅できねぇよ!
俺は熊と旅なんてできまーせーん」
言い放ちくるりと背を向ける。
しばらく背にあたる視線が痛かったがふとスバルの自嘲気味な笑いが聞こえた。
ああ いってしまう
静かな響きが聞こえて、苦しそうにハヤテは目を閉じた。
「行くよ、ユミレオ」
静かな声が聞こえて。
慌ててハヤテは振り返った。
「えぇ!?」
間抜けな声だけが、響いた。
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ああ、どうしよう・・・ついに一日三話UPという恐ろしい日を迎えるようになってしまいました!!
前から決めてあったところなので意外と書きやすいかな?
がんばっています。
ユミレオっていったいなんなのか。
ハヤテの間抜けな声が響くのは何故!?
全ては次に続きます・・・!!がんばれ、自分!!
(2002/08/31....haruco)